闇を切り裂きヒヤミカチ
昨日の続き、
仲井真県知事の3選を支持する自治体の首長たちの存在については昨日触れた。それ以外の事柄について、二三補足しておく。
ネトウヨの存在
幸福の科学や、幸福の科学に代表されるような極右のトンデモ的な団体等との関係の深い個人や集団が様々な動きをしている。数年前からのことであり、それらはそれなりの広がりと表立った活動を成している。いちいち取り上げるのも鬱陶しいが、ネット上の活動だけではなく県民の反基地行動への嫌がらせや、尖閣問題等での中国脅威論を煽り立てる役割を積極的に担っている。
自民党県連が普天間飛行場の「県外移設」を主張している間は、これらの動きが揶揄する対象は反基地の県民のみならず自民党県連でもあり仲井真知事でもあったが、自民党県連と仲井真知事が辺野古新基地建設容認に転じてからは、仲井真知事へ感謝する集団に転じている。宜野湾市で行われた仲井真知事に感謝する集会での基調講演は、中国を敵視し侮蔑する排外主義そのものであったし、仲井真と自民党県連はそのような支持層を内に包摂している。*1
安倍政権を支持する全国的な動向と、沖縄は決して無関係であるわけではない。地方自治体である沖縄県の仲井真知事は武力を行使する実力部隊を有しているわけではないので、安倍首相の危険さと同一視はできないが、しかし安倍の応援団を自称する仲井真の危険性は無視できるレベルではない。*2
仲井真知事が地方自治の本旨に則り、国が行おうとしている「島嶼防衛」について島嶼の立場から物申すことはないし、沖縄は政府のされるがままである。
状況の変化
11月の県知事選挙に向けて、沖縄の政治状況はどうなっているのか。
基地あるがゆえに、沖縄は「基地を是認する保守」と「基地に反対する革新」という構図で長い間、域内における政治的な戦いを続けてきた。その構図が壊れ、オール沖縄という状況で日米両政府に対してオスプレイ配備反対・辺野古新基地建設反対が叫ばれていた。それが自民党県連と仲井真県知事が政府案容認に転じることで、オール沖縄の構図が壊れた。
現在はオール沖縄以前の保革の構図に戻ったのかというと、状況は単純ではない。
翁長那覇市長を県知事候補にという動きは根強くある。革新側も、生粋の保守である翁長那覇市長を、辺野古新基地建設を断念させるという立場から候補者として担ぐ心づもりである。それほどまでに、辺野古の新基地建設問題は沖縄の戦後史の中で重要な意味を持つ。保革を超えた沖縄の意思を貫き通し、日米両政府は辺野古新基地建設を断念すべきだという人々の願いは絶えない。経済界からも、ホテルグループ大手のかりゆしや、県内でスーパーなどを経営するカネヒデなどの経営者/陣が翁長支持を明確にしている。
那覇市議会の自民党所属議員は辺野古移設容認に転じた県連の方針に決然と異議を申し立て、翁長那覇市長を県知事候補にと公式に動き出した。自民党沖縄県連は除名などの厳しい処分を示しているが、自民党は旧態とした安定さを喪失しだしている。*3
復帰後の西銘保守県政で副知事を務めた座喜味彪好さんや、県議会議長も務めた元自民党沖縄県連顧問の仲里利信さんなど、保守系の大先輩たちが辺野古新基地建設に反対する立場から異議を発している。*4
学者文化人や議員や市民も含め各界各層から有志が個人で参加する「建白書」を実現する運動も取り組まれている。
自民党県連は仲井真3選を、公明党との選挙協力で成し遂げたいと考えているが、公明党沖縄県本部は、県知事選挙に対する去就を明らかにしていない。*5
オール沖縄について
「オール沖縄」的状況は、昨日今日突然出てきたのではない。大田革新県政のときに、「基地返還アクションプログラム」が策定され公表された。あのとき既に、オール沖縄の萌芽があったとみるべきなんだろう。それまでの革新勢力は、復帰時の無条件即時全面返還がテーゼであった。「基地返還アクションプログラム」には評価がいろいろあるだろうが、即時ではなく段階的ということは現実対応として在るものを認めるということである。1998年の「県政不況」なる造語に代表される政府と自民党勢力あげてのキャンペーンが奏功し大田革新県政が潰えて、稲嶺保守県政へと至ったが、稲嶺県知事は無条件に辺野古新基地建設を容認することはできなかった。それが軍民共用であり使用期限*6であり、稲嶺県知事はそれらを持って名護市長に協力を依頼し、名護市長は稲嶺県知事の協力を受諾した*7。しかし、それらの条件が米軍再編で葬り去られてしまう。稲嶺県知事は当然、簡単には再編案を受容できない。それが仲井真県政へ引き継がれていた。名護市長が拒否している現在、これまでの沖縄の政治的連続線の上からは、辺野古新基地建設は沖縄県が受け入れられる性質のことではない。
仲井真県知事と自民党沖縄県連が成したことは、これまでの沖縄の政治的連続線を破壊し、日米両政府に隷従することである。
保革を超えた沖縄の一線を、ここで死守できるか否かは、沖縄の命運を決める。
仲井真3選へと自民党沖縄県連は走り出したが、対する陣営は本当に細やかな線をつなぎながら11月を睨み動いている。
沖縄への政治的圧力は尋常ではない。しかし、これを跳ね返す、したたかなおおらかさが沖縄にはある。
やがて、ときがくる。ヒヤミカチ、うきてぃまんたる。
了
*1:この集会には仲井真知事自身も参加していた。
*2:いちいち出典を探さないが、仲井真知事は公の場でメディアを前にして「私は安倍首相の応援団を自認している」と喋っている。
*3:7月9日→自民沖縄、那覇市議12人を処分 知事選で那覇市長擁立:朝日新聞デジタル
*4:座喜味彪好さんの琉球新報「論壇」。仲里利信さんの記事→「異議あり!辺野古移設」
*5:沖縄では9月に統一地方選で市町村議会議員選挙がある。それが終わるまで表立った動きはないだろう。
*6:稲嶺県知事は新基地を「県民の財産」と呼び換えたが、あのレトリックは、沖縄の保守層も米軍基地をそのままでは許容できないことの裏返しであった。翻って、現在の自民党県連、仲井真県知事の選択は沖縄の保守政治の連続線の上にはない飛躍/転落である。
*7:1999年に県知事が条件を示し名護市長に協力依頼し、名護市長が条件付で容認し、それを受けて政府は閣議決定した。この事実は大事。県も市も、スジを通して普天間返還に協力した。それを破壊したのは日本政府。ことの経緯に鑑みれば、仲井真知事と自民党県連の今日の折れ方は無惨。公明党沖縄県本がおいそれとは一緒になれないのはむべなるかなである