みやぎブログ

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辺野古埋立承認問題について

沖縄県議会が開会中だが、仲井真県知事の詭弁を弄す姿は異常でさえある。本人が自らの言っていることが詭弁ではないと思っているなら、かなり重症であり知事職に留まり続けるのは沖縄にとって何一ついいことはない。

 

【公約違反について】

 

12月27日の埋立承認発表の記者会見の席上でも記者に「公約違反」について問われ、「公約は変えていない、変えていないので説明する理由もない」と説明責任を何一つ果たさないで今日まで来ている。

仲井真の言い分は、5年以内の普天間基地の閉鎖状態を求めている。それには暫定的であったとしても「県外」への移駐・移設が伴うので、自らの「県外移設」に合致する。何よりも公約は普天間の危険性の一日でも早い除去であり、それに向けて沖縄政策協議会でも4項目の具体的負担軽減策を要求しており、仲井真県政は公約実現に邁進しているというものである。さらに辺野古・県内移設反対とは一度たりとも言ったことがないと強弁する。

 

2010年の県知事選挙において仲井真候補は選挙時の政見放送をみても、政策の第一番目に「この普天間基地日米共同発表の見直し、県外移設を強く求める」と言っている。

 

2010年5月28日の日米安全保障協議委員会の共同発表では、普天間基地について「2006年5月1日のSCC文書「再編の実施のための日米ロードマップ」に記された再編案を着実に実施する決意」と確認されている。

2006年5月1日の「再編実施のための日米のロードマップ」では「普天間飛行場代替施設を、辺野古岬とこれに隣接する大浦湾と辺野古湾の水域を結ぶ形で設置し、V字型に配置される2本の滑走路はそれぞれ1600メートルの長さを有し、2つの100メートルのオーバーランを有する」とある。

すなわち「日米共同発表の見直し」とは、「辺野古岬とこれに隣接する大浦湾と辺野古湾の水域を結ぶ形で設置」される「普天間飛行場代替施設」の見直しである。

 

仲井真知事は、自ら「見直し、県外移設を強く求める」と公約した「普天間飛行場代替施設」建設のための埋立申請を承認したのだ。これは端的に公約違反である。実際、諸般の情勢の中で、公約が実現できなくなる局面や事態はありうるだろう。その際には、きちんと有権者に対して説明責任を尽し、その上で理解と同意を得るべく新たに選挙で信を問えばいい。重大な公約違反をしておきながら詭弁を弄して公約違反を認めず県知事という大統領職に留まり続ける仲井真は、とても危険な人物である。

 

【法律違反疑惑について】

 

仲井真県知事の埋立承認については沖縄県議会に百条調査委員会が設置され、知事を始め関係部長の証人喚問、名護市長らの参考人招致が行なわれている。

公有水面埋立法4条1項は「各号ニ適合スト認ムル場合ヲ除クノ外埋立ノ免許ヲ為スコトヲ得ズ」であり、4条1項2号は「其ノ埋立ガ環境保全及災害防止ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト」と規定している。

環境生活部は、事業者の環境影響評価書に対して「自然環境の保全は不可能」と厳しい知事意見を出している。今般の埋立申請に対しても「懸念は払拭できない」としているが、埋立申請を審査している土建部は最終的に「現段階でとりうる保全措置が講じられている」と判断し「留意事項」を附して埋立承認とした。

現段階の沖縄県政の言い分は「法律に則り承認せざるえない」というものであり、そこには知事の政治判断はなく埋立承認は行政判断の帰結だとしている。

 

昨年12月23日に東京で入院中の知事に対して報告のため上京した土建部長らは、4条1項2号について記者団に「適合・不適合双方の判断が成り立つと知事に報告」としていたが、現在では、あの時点では埋立土砂に混入する「外来種」問題の一点が審査未了で、それらが完了したので適合判断に至ったと説明している。

ここには明らかに承認に至った物語をつくるためのウソがある。実際には不適合の判断が成り立つと考えていたにも関わらず、それでは適合にした政治判断が問われると考え、審査未了であった部分が存在し事務的に完了したので適合判断に至ったという物語にしている。

ここで起こっている矛盾や破綻は甚だしい。埋立審査を所掌していた土建部長は昨年12月段階での新聞記事における自身の発言や報道の傾向を、すべて否定しなければならなくなっている。県議会で発言詳細について問われると「覚えていない」と逃げつつ「報道が真実かというとそうではない。すべては決済文書です」と自分たちが作った文書だけが真実だと強弁せざる得なくなっている。さらに議会での答弁では問われてもいないのに、沖縄県建部が埋立承認審査を行なってきたこれまでの件数などを持ち出し自らの判断の正しさ(らしさ)を補強する。言質を取られまいと多弁を慎んでいる土建部長の要所要所の多弁が、もう怪しすぎてしょうがない。

この件については、沖縄の二つの新聞社が取材に基づき報道した記事のほとんどが誤りであるかの如き発言が県議会で堂々と行なわれ続けている。この事態を新聞社が看過することは、報道への信頼性を著しく損ね、ひいては行政や権力者のやりたい放題を招く。憂うべき事態が進行中である。

 

環境保全措置に関しては、ジュゴンや海亀の保全策も含めて不透明な部分が多く。それらをどのような科学的知見で適合と判断したのか、沖縄県は厳しく説明責任が問われる。場合によっては、公有水面埋立法4条1項2号に著しく反することを承知の上で適合とした行政行為である可能性がある。沖縄県議会百条調査委員会の結果がどうなるかは予断を許さないが、県議らの行政に対する調査能力も問われている。

 

[追記:補遺として]

 

Facebookにこの件で書いたコメント二つ

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(埋立承認問題の沖縄県議会の)議会中継をみていると、土建部長や知事公室長らの「新聞報道」の矮小化はすごいよ。曰く「報道は真実じゃない」曰く「記者はそう思ったんでしょう」曰く「誤解を招く表現」…新報・タイムスの記者諸君はこんなこと言いたい放題させてたら、それこそ新聞の公器としての立場はなくなるよ。まるでタブロイド紙か週刊誌扱い。

 

県知事の詭弁はものすごい。権力者の詭弁を是認してはいけない。こんなことが当たり前の風潮になることは、民主主義の死であり政治そのものの死につながる。ここいらへんは、新基地建設問題が大田県政(一義的には市と国の問題である論)から稲嶺県政(県民の財産・軍民共用空港論)へと至り、仲井真県政で壊れてしまった感がある。やはり重大な政治的案件については、原理原則を踏み外して対処してはならないということに尽きるのかもしれない。機会があれば少し落ち着いて考えてみる。

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この二つのことは、ひとつのことであり、この社会の根幹を腐食し破壊する。この動向は沖縄ローカルだけの問題ではなく、国政における極右安倍政権や日本国の巨大都市における知事選等の結果と連動し、歴史修正主義ヘイトスピーチと呼応する。

日本の左翼や活動家の間では、沖縄の闘いや政治がまるで希望かの如く語られる向きもあるが、起こっている事態を軽く考えてはいけない。我々は相当深刻な地平に立っている。