みやぎブログ

演劇・戯れ・政治

「影響」と「負担」の間の穴

記事の書き方を忘れてしまった。発語訓練のつもりではじめる。
6月21日に「2プラス2」が行われたらしく、琉球新報で下記のような報道(6月28日)があった。

米に配慮し「影響」 枝野長官「負担」表記を変更

「影響」と「負担」

外務大臣と同席し沖縄県知事に説明した外務省幹部によると「事象は一緒だが、表現する英語として違う」ということらしい。

事象は一緒だが、表現する英語として違う」ことを、英語の表現に合わせて日本語を直すということは、事象への対処を英語の立場で行うことに他ならないのではないだろうか。言いすぎだというなら、英語の立場に寄り添った形で対処していくという意思の発露だといってもいい。

1995年に沖縄県知事が表明した「応分な負担を」という主張に日本国政府が嫌々ながら呼応し、お題目とされてきた「負担軽減」という言葉が終焉した。政治家や官僚は、言葉としてこれからも沖縄や国内向けには使うだろうが、日米双方の認識として終わりにさせたことはまちがいない。

「負担」につきまとう「負」の意識を払しょくすることで、日本政府は対沖縄に普天間の「固定化」という言葉すら出すことができる。

including in Okinawa

「2プラス2」の合意文書等は外務省のサイトにある。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/2plus2.html

在日米軍の再編の進展」という当該文書では

閣僚は,現下の変化する地域の安全保障環境に鑑み,抑止力を維持し,日米同
盟の能力を強化するために,沖縄を含む日本における米軍のプレゼンスの重要
性が高まっていることを強調した。
閣僚は,沖縄を含む地元への影響を軽減するとのコミットメントを再確認した。
それは,日本における米軍の持続的なプレゼンスの確保に寄与することとなる。

The Ministers emphasized the increasing importance of the presence of the
U.S. forces in Japan, including in Okinawa, to maintain deterrence and
strengthen Alliance capabilities in view of the current evolving regional
security environment. 
The Ministers reaffirmed the commitment to reducing the impact on local
communities, including in Okinawa, in turn helping to ensure a sustainable
U.S. military presence in Japan.

「沖縄を含む」という表現で日本における米軍プレゼンスが強調されている。

沖縄への過重な米軍基地集中のありさまを差別的だと告発する際に、日米安全保障条約には沖縄に米軍基地を置くとは書かれていないと強調(それはまったくもってその通りなのだが)されるときがあるが、条文には書かれていなくても、二国間の行政でその中身がこのように定着されていく。

沖縄は日米安保に「含まれ」ているのである。

民主主義のコスト

「2プラス2」の記者会見で日本の防衛大臣は、日本側からの記者の「普天間問題については、自民・公明連立政権時代のものに回帰している」という質問に答える。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/kaiken1106.html

いわく、「政権交代に基づく民主主義のコスト」らしい。

前政権とは違う政策理念を語り(騙り)、政権についた為政者どもが有権者を裏切る際に語る言葉としては甚だ不適切である。ここには民主主義はない。…しかし、その憤りも「含まれ」(つづけ)ていることを拒否するマイノリティとしての沖縄だから抱く憤りでしかないのかもしれない。マジョリティは、この回帰に安堵しているかもしれないのだから。

しかし、民主主義とはなんなのだろう。大阪では橋本知事が「独裁」を叫んで仲間内で喝采を浴びているらしい。沖縄はどれほどのコストを払い続ければ、危険な普天間の撤去・閉鎖と同時に新基地建設をさせない選択を勝ちうるのか。

日米同盟の基礎

「2+2」の共同発表に、次の一文がある。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/pdfs/joint1106_01.pdf

日米の共有された価値,すなわち民主主義の理想,共通の利益並びに人権及び法の支配の尊重は,引き続き日米同盟の基礎である。
Our shared values, democratic ideals, common interests, and respect for human rights and the rule of law remain the foundation of the Alliance.

「日米同盟の基礎」であるとされる「民主主義の理想」の実現を、沖縄の民衆は切実に求め続けている。そのことを無視し「固定化」と脅すしかない政策は、日米同盟の基礎をゆるがす誤った政策である。

「影響」と「負担」の間の穴

「影響」と「負担」の間には穴がある。大きな穴なのか、無数にあるのか一つなのか。その穴にはまり出られないのは沖縄なのか国家なのか為政者たちなのか民衆なのか。問いばかりが増えるが、考えることをやめるわけにはいかない。出口はある。それは私たちの希望でなかったとしても。