ISAF参加発言について
■普通の国
夕暮れの公園。ベンチ。男がひとり、ベンチに座り、釣をしている。釣竿に釣り糸はない。別の男がやってくる。
【なご】 なんか釣れますか?
【なぐ】 …
【なご】 なんか釣れるんですか?
【なぐ】 …
【なご】 聴こえないのかな。(大声で)なに釣ってるんですか?
【なぐ】 あっ、びっくりした。こんなそばで大声出さないでくださいよ。聴こえていますから。
【なご】 聴こえているんだったら返事ぐらいしてくださいよ。ところでなに釣っているんですか?
【なぐ】 暇人。
【なご】 それで、釣れました?
【なぐ】 あなた。
【なご】 人が悪いなぁ。お互いおなじ失業中の身じゃないですか。
【なぐ】 大声出さないでぐださいね。風邪ひいたみたいで頭が痛いんだ。
【なご】 それはたいへんだ。薬飲みました。
【なぐ】 風邪ぐらいは気力で治すものです。
【なご】 まっ、病は気からって言いますからね。
【なぐ】 ISAFって知ってますか?
【なご】 えっ、なんすかそれ。荒野の少年イサムなら知っていますが。
【なぐ】 ISAFをそのままイサフと呼んで、イサムにつなげる。しかし遠すぎる。あまりにも遠い。
【なご】 そんなことはいいじゃないですか。そのISAFがどうしたんですか。
【なぐ】 民主党の小沢さんが、給油には反対だが、政権とったら参加するといっている国連の「国際治安支援部隊」(International Security Assistance Force)なんですけどね。
【なご】 それなら知っていますよ。小沢さんも飛ばしますねぇ。
【なぐ】 国連決議でオーソライズされていないアメリカの戦争への協力である給油は、憲法が禁じている集団的自衛権の行使だが、ISAFなら国連の行為だから、参加すべきである、私が政権をとったら参加すると言っているんですよね。
【なご】 しかし、ISAFのほうが、陸上での治安活動だからもっと危ないんじゃないですか。
【なぐ】 ISAFの活動もいろいろあるようだから、日本として参加できる活動に参加するという選択肢はあるのかもしれないが、いずれにしても軍事行動。
【なご】 自衛隊が参加しても、足手まといじゃないですか。
【なぐ】 おっ、いいこというねぇ、で、そのこころは?
【なご】 だって、自衛隊は実戦経験もないから、他国の軍隊とはちがい士気が低いんじゃないっすか?
【なぐ】 少し残念。自衛隊員の士気が低いとか、そんなこと私はよく知らないが、もともと自衛隊は専守防衛のための組織。私たちが国に押し付けている憲法は「交戦権」を認めていないから、自衛隊員が発砲したりするのは正当防衛以外は違法。例のヒゲのなんとかさんが、巻き込まれうんぬんで問題になってたじゃない。
【なご】 そういえば、国会で福田首相がそれは違法だと答弁したらしいですね。
【なぐ】 新しいニュースばかりチェックしているんじゃないっすよ(笑)。たまには、こうやって公園に来て、釣りでもしながら人とコミュニケーションしないと。
【なご】 だいたいわかりましたよ言わんとするところは。ISAFに参加するとしても、そのような問題をどういうふうに解決するんですかね。まさか、撃てない鉄砲持って、参加して来いというわけにもいかないでしょう。
【なぐ】 そうなんだ。いくら国連がオーソライズしているからといって、そんなものに参加するということになったら、法律を整備しなおさなければならない。自衛隊員が人に向かって鉄砲撃てるように。憲法はそのことを認めているのか。これは大いなる憲法論議をしなければならない問題ですよ。だから、衆院選で民主党が政権とったとしてもすぐさまできる話ではない。小沢さんは合憲だとおっしゃるが、にわかに「そうですね」とはいかない。
【なご】 戦後、戦争でひとりも殺していないのに、いよいよ戦争する「普通の国」になるんですかね。
【なぐ】 そうはいうけど、日本国内にある米軍基地から米軍はどんどん戦闘のために出撃しているし。その基地を維持するために多額の税金を注ぎ込み続けているんだから、日本が戦争に参加していない誰も殺していないっていうのも、必ずしも「その通り」っていえる状況じゃない。
【なご】 でも自衛隊員は戦闘でだれも殺していないのは事実でしょ。
【なぐ】 それはその通り。
【なご】 それが大きく変わろうとしている。
【なぐ】 この議論は危ういんだな。アメリカに追随し続けるのか、そうじゃなく、国連主義で自主独立に進むのか。この二つに一つみたいな話に集約されつつあるけど、そうではない第三の道はないのか。そこんところを、模索しないといけないんだが、それをやってくれそうな社民や共産は国会ではとことんマイノリティになっちまっている。参院選でも自民惨敗の影に隠れたが負けてるし。
【なご】 軍事のこととか考えるのっていやですからね。「戸締りしないで寝るのかお前は」っていわれると、「ついついそうだよなぁ」って思ってしまうし。
【なぐ】 自衛隊をいまだに憲法違反だって糾弾するひともいるが、私だって憲法のどこをどう読んでも自衛隊は合憲だとは思えない。それでもリアルに存在するし、私たちの税金と未来の国民の税金もたっぷり注ぎ込んでもいる。どうしたらいんだ。
【なご】 そろそろ、まじめに具体的な議論をすべきですね。沖縄をいつまでも米軍に捧げている状況がおかしいのはみんな気付いているんだから。
【なぐ】 ISAFに参加発言した民主党の小沢さんを論難するのもいいが、それで現在の自民党の政権を延命させることになるのも酷すぎる。小沢さんも「どの分野にどれだけ参加するかはその時の政府が政治判断する」と言っているんだから、これから世論やいろんな議論で政治判断を動かすことはできるだろうが、この議論で野党共闘に決定的な亀裂が生じ、自民党政権の延命という最悪のシナリオもみえるし、オレは状況を憂えて、ほんとうに悩んでいるんだ。しかし批判はしなければならないし。
【なご】 そんなことを考えて、ここで釣りをしていたんですね。
【なぐ】 いや、釣りは暇だったからなんだけどね。
【なご】 一杯行きませんか。たまにはいいでしょう。
【なぐ】 もちあわせがあまりないので今日は遠慮しておきます。
【なご】 そこの自販機で缶ビールを買ってきましょう。それならいいでしょ。
【なぐ】 つまみはどうします。
【なご】 釣れるのを待ちますよ。
【なぐ】 えっ、あっ、…そうですね。それもいい。そうしましょう。
あたりはすっかり暗くなっている。街灯が、ベンチに座る二人の男を照らす。静かに溶暗。
【参考】
小沢代表論文「政権とればISAF参加」 国連中心強調(朝日新聞=2007.10.06)
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風邪ひいちまったみたい。歴史教科書の話といか、いろいろ書きたいことはあるが、今日はここまで。
みなさんに少しでもいいことがありますように。
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