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宮城康博blog

沖縄・自治・徒然…Ten Thousand Light-Years from Home

埋め立て申請が出された(追記あり)

■置き捨て、拾われ、進んでいく

 3月22日午後3時40分頃、沖縄防衛局は沖縄県北部土木事務所に埋め立て申請書を提出した。担当でない部署に突然運び込み「名乗らず、名刺も置かず、立ち去るまでわずか1、2分」という姑息な早業だったという。その直後、県庁から北部土木事務所に「今から提出に来るようだ」という電話が入るというおまけつきである。(沖縄タイムス2013.3.23

 名護漁協は補償額でごねるかと思われていたが、どういう金額や条件で妥結したか知らないが同日役員会を経て午後3時に同意書を提出していたらしい。これまで右翼曲折あったのでここで少しでも障壁になってはいけないという判断が働いたんだろう。古波蔵ら名護の「誘致派」は、しばらく前から向こう側にいる。琉球新報2013.3.23

 これで手続きのスケジュールは動き出し、年内にも知事の承認の可否判断が示され、仮に不承認になっても国による代執行が可能になる。

 新基地建設を進める国としては行政的な大きな一歩を踏み出した。アセス評価書と同じように、またしても書類と段ボール箱を沖縄県に置き捨てる形で。またしても沖縄県知事は「県外移設」を求める姿勢を顕示しつつ置き捨てられた書類を拾い手続きを進める。 

■戦争回避と理(ことわり)と

 この局面で、我部政明は「沖縄の利益とは何か。なんとか戦争を回避して、平和で安定した海と境界を取り戻すことではないか」と語り沖縄タイムス2013.3.23佐藤学は「圧倒的少数者である沖縄には、『理』を立てていくしか要求を実現する方途は無い」として米国の財政状況等の実状をつくと同時に、一兆円に上るはずの日本側支出の無駄を指摘し続け、在沖海兵隊島嶼防衛の役に立たないことを暴き続ける必要性を指摘する沖縄タイムス2013.3.24

 我部さんの「戦争を回避して」という言葉がリアリティを持って重く、学さんの指摘する「理」が正気を保ち続けようという叫びにも響く。

■市民の動き

 市民としてやれることは、県知事に埋め立て承認をさせないための働きかけと、「理」をもってそのことを成すための学習と他者との交信だろう。沖縄生物多様性市民ネットのキャンペーン2013.3.23が早速始動している。

 沖縄防衛局への抗議行動や、基地ゲート前での行動なども粘り強く続けられている。

■政治

 今後の行政動向に影響を与える選挙などの政治は、県知事の可否判断の時期とも関連してくるが来年1月には名護市長選挙がある。いまのところ現職で反対している稲嶺進市長の対抗勢力の動きはみえない。名護の自民党勢力は「推進派」と考えてまず間違いないが、全県的な自民党県連の「県外移設」とどのように折り合いをつけて選挙体勢が整えられるのか不明瞭のままである。

 私見だが、名護市において情勢をひっくりかえすことは容易ではないと政府は考えているだろうと思われる。1998年の名護市長選挙は建設の判断を「凍結」することで保守側が逃げ切り、当選した名護市長は1999年に【県知事の要請】を受けて条件付で基地建設を受け入れた。仲井真県知事が現在のスタンスを取り続ける中で、名護市長が政府と直で基地受け入れを公約し当選することは至難である。政府は、名護市ではなく沖縄県を折れさせることに全力を費やすだろう。一部では、仲井真県知事を1997年の名護市長比嘉鉄也にして(受入表明し辞任)、翁長那覇市長を1998年の出直し名護市長選挙時の岸本建男にする政府プランが囁かれているようだ。政府の考えそうなことだが、絵空事とばかりもいっていられないような気はする。エスタブリッシュたちが考えていることを侮らないようにしていたい。この問題は沖縄ではほぼなんでもあり―だと政府官僚や政治屋どもは考えているとしかおもえないーでここまで来た。カヌーで抵抗する市民に対して自衛隊の戦艦も出動されたし、防衛局も海保も米軍基地内から出動し市民と対峙した。本土マスメディアの無視や意図的な矮小化が、政府のやりたい放題を助長し国民多数の無関心を醸成している。

■「県外移設」要求の危うさ

 沖縄の自民党県連は、3月24日に常任総務会を開き、あらためて「県外移設」を堅持し続けることを確認した琉球新報2013.3.25。7月の参院選挙やその後の選挙(来年の名護市長選挙/県知事選挙)への影響を考えての判断なんだろうが、政府自民党が新基地建設をこのような形で進行させているのに、同じ自民党が真逆のことを県民に言い続けることをどのように信頼しろというのか。自民党県連が、党本部に反旗を翻してでも譲れない主張だというなら、全員離党の覚悟を示し党本部と交渉するなどの姿勢をみせるべきだろう。…こんな「べき」論が通用しないほどには、ずるずる呑み込まれ懐柔されていくのは目に見えている。

 オール沖縄での「県外移設」要求は、名護市への新基地建設反対とイコールではない。仲井真県知事は、それでは遅いからと「県外移設」を要求しているだけである。オール沖縄での「県外移設」要求は、どこか危うい。自民党県連や公明党の政府与党でありながらの「県外移設」要求は、どのように決壊していくのか。決してその点では、自民も公明も県民/有権者を裏切ることは無いと信じられる根拠が私には無い。裏切られたら次の選挙で落とせばいいなどと悠長なことをいっていられないほど、裏切りで既成事実は積み上げられ進み、次の選挙では違うことが争点化する。利害の複雑さは調整の複雑さにつながり、政治は個々人を分断し疎外する。

 もとより行政は基地問題だけ扱っているわけではない、地域振興や福祉や諸々と行政ニーズは幅広い。沖縄県政は様々なチャネルで政府と共に行政を進めていかざる得ないが、政府はすべてを動員して沖縄県政を折れさせることに集中している。私たちは、注意深く、折れさせないよう様々な働きかけをすると同時に、行政や政治家などのエスタブリッシュな権力とは異なる私たち自身の抵抗線を厚く強くしていく必要がある。

■平和を渇望し

 1997年の名護市民投票から16年余が過ぎた。こんなに長い間、引っ張ることになるとは私は想像もしていなかった。政府の諦めの悪さは尋常ではない。これまでの様々な局面が思い返されるが、「理」を捨てず正気を保って、踏ん張って押し返していくしかない。

 ここ近年は「差別」という言葉が新聞紙上にも頻繁に出るし私自身も使っているが、保革ないまぜで「県外移設」という「平等負担」を要求し続けることで、軍事基地そのものへの私たち自身の姿勢がカッコで括られ有耶無耶にされていかないか/いってはいないか気になっている。人々と共に平和を渇望し、基地の存在の不条理さに存在を投じ拒否を示した普天間ゲート封鎖を忘れはしない。我々を分断し権力を利するあらゆる切断線を斥け、丁寧に思考し踏ん張る必要がある。

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 とはいうものの、環境影響評価で沖縄県(知事)は「生活/自然環境の保全は不可能」と厳しい意見を出している。県民の生命と財産を守る県知事の立場からは、それらも充分に事業に対する反対の論拠になる。しかし、知事の発言は普天間の危険性除去が議論の主調になり、新基地建設(辺野古移設)では時間がかかると言う主張に力点が置かれている。

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【追記】

フェイスブックで知人からコメントをいただいた。重要な指摘だと思うので、ここに記しておく。

宮城さんの分析に蛇足ながら加えるならば、副知事人事が今後どのように作用していくのか気に掛かっています。きちんと重しをかけておかなければ、と思う次第。

彼が仲井真県知事や県議会与党の有権者との公約を超えて、政府との協調地平へ一気に持っていく可能性はある。県議会はかつての「沖縄イニシアチブ」が持っている政府との協調路線が、現在の沖縄による対政府交渉に否定的に及ぼす影響を考慮して、副知事人事への同意案件は慎重審議を尽くしてほしいものだ。

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