“ギャラリーみんたまあ”一周年
先週末から週中にかけて、久しぶりに名護市・ヤンバルを訪ねた。
主たる目的は、大学教員たちでつくる「まちづくり検証研究会」のヒアリング調査。調査対象等を、私がコーディネートさせていただいていたので、二日ほど立ち会ってきた。
ヒアリングは、名護市の第一次総合計画(1973)のテーゼ『逆格差論』が、なぜ成功しなかった(?)のかを検証するために、往時の市長や関係職員等に協力していただいた。私自身も、ヒアリング対象だったのだが、東村にある沖縄国際大学のセミナーハウスで一泊しながら、研究会の先生達といろんな会話を楽しんだ。
名護市は1町4村が合併して1970年8月に市制施行した。1972年には、沖縄の施政権は日本国に返還された。大きな変化の中にあって、名護市はどのように新しいスタートを切ったのか。次回から、「逆格差論」についてのノートを連載していきたい。(復帰に伴う日本国政府の振興開発計画が本土と沖縄の「格差是正」をテーマにしており、それに真っ向から対峙し、本土と沖縄の格差は逆だと断じたのが「逆格差論」である。)
今日は、ヒアリング調査でもお世話になった、名護市にある市民有志が手作りで開設運営しているギャラリーについてのお話し。
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名護市は「フォトシンポジウム」などが定期的に開催されるなど、写真や絵画などの文化活動が盛んであった。しかし、美術館や常設の展示スペースはなく、故岸本建男前市長の時代に「写真のまちづくり」などが模索されるなどの動きはあったが、島袋吉和現市長になってからはそれらの動きは潰えてしまった。市立博物館が老朽化していることもあって、おそらくハコモノだけは造ろうとするだろうが、中身が伴っていけるのかは心もとない。
そんな名護市のなかで、行政の姿勢がそんなんだったらそれに頼るのではなく、自分たちで創っていこうと動き出して造られたのが「ギャラリーみんたまあ」である。
みんたまあのスタッフから、一周年を知らせるメールが来たので、その内容を下記に転載します。
[E:clip]
期間:2008年8月5日(火)~10日(日)
ヤンバルの地に昨年の8月1日誕生した「ギャラリーみんたまあ」は、よちよち歩きながらなんとか一周年を迎えることができました。
一周年を迎えるにあたり、8月5日(火)~10日(日)までの間、「ギャラリーみんたまあ」で活動するメンバーによるグループ展を開催します。
それぞれの作品や活動を紹介した展覧会です。
これからも「ギャラリーみんたまあ」をよろしくお願い致します。
ギャラリー開設にあたっての、有志一同の文書も手元にあるので紹介します。
[E:clip]
「ギャラリーみんたまあ」の開設にあたり
昨年の8月1日、名護博物館の向かいに有志が企画し、自主運営する「ギャラリーみんたまあ」がオープンしました。名護市在住の有志が集まり、各々得意分野をいかしながら運営しています。
中央至上では、僻地は、なにもない場所となってしまいます。しかし、人の営みに中央も僻地もなく意義深く豊かなはずです。この地に根ざした人々の営みを見つめていきたいと思います。「ギャラリーみんたまあ」は、やんばるのさまざまな文化活動の創出を支援しています。活動の理念
四季に彩られるヤンバルの時の流れは、多くの個性的な生き物たちを育み、さまざまなドラマを生んできました。その中で豊かな文化を育み残してきたヤンバルの先人達。しかし現在・・・ 利便性が強調された都市化への流れは、このヤンバルを無機質なものにしようとしています。
「ギャラリーみんたまあ」は母なるヤンバルの地から生み出される人・モノ・文化を掘り起こし、活動を展開、発信し続けていこうとする場所です。「みんたまあ(沖縄の方言で目玉のこと)」を大きく見据え、新たな可能性を求めて、今、歩み始めます。これまでとこれから
開館以来、これまでに、22の企画展(写真・絵画・工芸など)を開催。地域の人々のくらしに根ざした文化活動を底辺から支援するという共通認識のもとに、名護・やんばる地域で活躍した方々の遺作展や若者の作品発表の場を提供してきました。
ギャラリーの運営方法については、創設のメンバー7人と支援スタッフが基本的には当番制であたっています。お互いの仕事に支障がある時には、できるかぎり調整していますが、活動を広げるためにも、地域の若者など「ギャラリーみんたまあ」の支援者を広げていくことがこれからの課題としてあげられます。しかし、この小さな展示場所から見えてくる名護・やんばるの地域情報も膨大で、行政の支援なしに独自に生活、活動している人も数多くいることがわかりました。
文化活動は、地域の活力、生活力だと考えます。まちの活気やそこに生きる市民の気概も含めて、多くの市民の理解を得ながら活動を展開していきたいと考えています。平成20年8月吉日 ギャラリーみんたまあ一同
[E:flair]
名護市を訪れる機会があるときは、ぜひ「ギャラリーみんたまあ」を訪ねてみてください。
“ひんぷんがじまる”近くで、名護市立博物館のほんとうに目の前の三階建てビルの二階です。
基地建設絡みのお金に頼る“まちづくり”が成功するはずがない。大事なのは、人々の暮らしの中から立ち上がってくる気概であり、内発的なものである。
「ギャラリーみんたまあ」は小さいけど、名護市が進むべき道を、静かに示しているように思える。
私も、名護に行くときは、必ず立ち寄る場所にしようと思っています。
[E:end]