岩国市長選挙について
岩国の出直し市長選挙(2月10日投開票)の相手候補が決まったようだ。
岩国市長選立候補、福田良彦衆院議員が正式表明(読売新聞・九州発)
いわゆる小泉チルドレンのひとりのようです。
本人のホームページをみたが、なんかボーっとした感じのにいちゃん。活動報告も要請陳情の受付や他の議員の国政報告での挨拶とか街頭で演説したとか、おまつりで挨拶したとかそんなんばっかし。政府自民党が、国政選挙並みの金をぶち込む選挙になるんだろうな…
昨日の“なごなぐ”の記事へトラックバックいただいた、ポチさんのエントリーで、井原前市長の立候補に当たっての「市民に訴える」の全文が掲載されています。必見。それに、福田良彦氏の地元での評判(笑)も一読に価します(ポチさんありがとう)。…しかし、どんなに評判の悪い頭の弱そうな候補者だって、衆院議員に当選しているんだから、あなどることはできない。
「ともにこの試練に立ち向かおう」井原市長の訴え(A PLACE IN THE SUN)
《続き》に新聞記事の引用や、山口県知事の発言等も紹介しながら、コメントを少し書きます。
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読売新聞の九州版は立候補表明を次のように報道している。
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米海兵隊岩国基地(山口県岩国市)への空母艦載機移駐問題を巡り、移駐に反対する井原勝介・前岩国市長(57)が辞職したのに伴う市長選(2月10日投開票)に、自民党の福田良彦・衆院議員(37)(山口2区)が5日、無所属で立候補することを正式に表明した。
市長選は再選を目指す井原氏と、移駐容認派の市議や経済界などが推す福田氏との一騎打ちとなる構図がほぼ固まった。
同市で記者会見した福田氏は「市は財政が厳しく、大事な時期を迎えている。何とかしてほしいと多くの人に推されて決意した」と述べた。
移駐問題を含む在日米軍再編への対応については「国には協力する立場だが、言いたいことはきちんと伝え、現実的な対応を取りたい」と容認する姿勢を示した。そのうえで、井原氏の市政運営について「米軍再編に関連して国や県との対立をあおるような姿勢だった」と批判した。
選挙戦では岩国基地での民間空港の再開促進や地域医療の充実、学校の耐震化などを訴える方針。
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市財政が厳しいのは愛宕山開発の問題等も含めて事実なのだから、政策争点としてはそれなりの強度を持つ。自治体財政は国や県との関連が深く複雑。しかし、法治国家である限り、国や県が恣意的に左右できないレベルがあり、適切な行財政改革を行っていけば破綻は回避できる。そのことを有権者にしっかりと訴求する必要があるだろう。有権者の獏とした《不安》を取り除くことが大切。
井原氏は自身のホームページで今次選挙について次のように書いている。
今、岩国は未曾有の困難に直面している。こうした非常の時にこそ、「政治」のあり方が問われる。即ち、民主主義が機能し市民の利益を 守る政治か、それとも、一部の利益が優先され市民の利益が後回しにされる古い政治か、どちらを選択するかが、今回の選挙の大きな争点であり、その結果によ り、自然に米軍再編などへの対応方針も決まることになる。
財政が問題視されるが、きちんと行財政改革を行っていけば、そんなに簡単に破綻するものではない。問題をすり替えないで、米軍再編に正面から向き合い、目先の利益ではなく、岩国の将来にとって何が重要なのか、冷静に判断すべきである。
おそらく自公陣営は相手候補が記者会見で批判しているように、ネガティブキャンペーンとして《国・県との対立をあおる姿勢(市政)》というイメージをあおってくるだろう。井原氏の抑制の効いた抵抗が、スジを通した主張が有権者にきっちりと手渡せることを祈る。そうすればそのようなキャンペーンは跳ね返せる。
民間空港の再開促進も国・県の協力を必要とする案件なので、権力者側は立場を利用していろいろあおってくるだろう。日米協議で合意されている事項なので、それを実現せよとスジを通して堂々としていればいい。外部者としての目からは、赤字路線を整理している最中の航空会社が就航するだろうか経営は成り立つだろうか…無駄なのではないかと思うが、地域には地域の事情がある。
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山口県知事は、岩国の市長選挙についてどのように語っているか。
市長選結果で県姿勢変えない(中国新聞08.1.5)
米海兵隊岩国基地(岩国市)への空母艦載機移転を最大の争点に2月10日に投開票される出直し岩国市長選について、山口県の二井関成知事は4日、選挙の結果いかんで県の基本姿勢を直ちに変えることはない、との方針をあらためて示した。
二井知事は年頭の記者会見で出直し市長選について「選挙の民意は判断が難しい。いろいろな要素が絡んでいる」と持論を展開。市民の選択を受けた新たな市長が、容認派が多数を占める市議会との間で意見を集約した結果を「地元の意向」として尊重する考えを強調した。
二井県知事がどんな人物なのか私にはぜんぜんわからないが、今夏には四選を目指して県知事選挙に出馬するらしい。多選するぐらいだから、選挙には強いんだろうきっと。
この知事が言っている県の基本姿勢とは、山口県の広報広聴課による知事の記者会見録を読むとわかる。
知事記者会見録(12月28日実施分)
「米軍再編問題とそれに関連する愛宕山の問題、民間空港再開の問題、これらを含めて、私と一緒になって国に対して行動ができる方に、ぜひともなっていただければ、大変ありがたいと思っています。」
会見での記者とのやりとりを読んでいると、閣議決定は変えられないのだから艦載機移駐には賛成、愛宕山は米軍住宅用地として国に売却する、それらとセットではじめて民間空港は再開される、そんな考えのようである。
岩国市長選挙が、どのような山口県の政治状況の中で闘われるかを思うと、なにひとつ楽観視はできない。岩国市民は、たいへんな試練を超えていこうとしている。
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井原氏の立候補にあたっての「市民に訴える」は、ポチさんのところにも全文あるんだけど、私も紹介させてもらう。
なお、同文書は井原氏のホームページにも全文掲載されている。
「民主主義と自治を守る戦い」という井原氏の今次選挙の意義付けは、複雑な岩国市の置かれている状況や政治的判断から導き出されたものだろう。私はまったくもって正しいと思う。
岩国市民と共に国の不当な押し付けに立ち向かう井原勝介氏の勝利を願うと同時に、私たちは憲法12条にある「不断の努力」を行うべきものとして、この市長選挙を傍観すべきではない、とあらためておもう。
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「市民に訴える」-争点は、米軍再編にあらず-
平成20年1月4日
井原勝介1、争点は米軍再編にあらず、岩国の民主主義と自治を守る戦い
今、岩国は、多くの困難に直面しており、将来を決める重要な岐路に立たされています。こうした時にこそ、主権者たる市民の利益を守る政治本来の役割を求められ、その真価が問われます。
しかるに、「来るものは来る」、「容認しなければ財政破綻する」、逆に「受け入れれば5千億円から1兆円もらえる」などと責任ある政治家が誤った情報を宣伝し、いたずらに不安をあおり、市民の意見を二分しようとする、国や一部の利益が優先される古い政治の体質が浮き彫りになっています。非常の時だからこそ「政治」のあり方が問われています。
私は、国の行政に携わる中で、政官業がもたれあい国民の利益が後回しにされる現実を目の当たりにし、政治を変えたい、市民の声が大切にされる真の「民主主義」を実現したいという一心で故郷岩国に帰って来ました。以来、あらゆる機会を通じて市民との対話に努め、常に民意を肌で感じながら、市民の平安な生活を実現するための政治を行ってきました。「常に市民とともにある」これが私の原点であり、一貫した理念です。
民意は変わったという声もありますが、基地周辺に住み長い間様々な負担に苦しんできた人々の想いは、他から測り知れないものがあり、お金や圧力などにより簡単に左右されるものではありません。我々が尊重すべき「民意」とは、まさにこうした人々の切実な声であり、そうした基本的な民意はあまり変わっていません。直接的影響の少ない地域の皆さんにも、岩国市民の共通の問題としてぜひ一緒に考えていただきたい。2、米軍再編
私は、基地撤去を主張しているわけではなく、これからも基地の安定的運用に協力する姿勢に変わりはありません。しかし、今回の米軍再編に関する国の進め方はあまりにも一方的で、突然の補助金カットや容認を条件とする再編交付金などのアメとムチで市民の意思を抑えつける手法は、到底納得できません。
しかも、こうした措置があの前代未聞のスキャンダルの渦中にある守屋前防衛事務次官の強引な発想によるものであることが明らかになってきており、今回の米軍再編そのものの正当性にも疑問が生じてきています。もう一度原点に立ち返って考え直す必要があります。少なくとも、国策だからと「鵜呑み」にするのではなく、言うべきことはきちんと言い、あくまで市民の側に立って主体的に判断すべきです。
そこで、先般、国に対して5つの条件(試験飛行の実施、NLPの恒久的基地の明確化、海上自衛隊の残留等)を提示しました。私は、反対・撤回一辺倒で国との話し合いを拒否しているわけではありません。過去にも、国との接点を求めて、移駐機数の削減や厚木の訓練の分散とその一部の岩国引き受けなどの提案もしましたが、いずれも拒否されました。今回こそは、ぜひとも一歩前に出てきて欲しい、お互いの立場を尊重しながら誠意を持って話し合いを行えば、必ず納得できる解決策を見つけることができるし、そうなれば合意も可能です。3、財政その他の課題
財政が厳しいことは事実ですが、昨年策定した「財政健全化計画」に基づき、7年間で、約300人の職員数の削減等の経費削減を行い、1000億円余りの借金を約150億円削減することを目指すなど、必ず建て直します。
12 月議会で補正予算案が成立し庁舎建設の財源として一定の合併特例債が確保されましたが、国に対しては、あくまで合意に基づき予定通り35億円程度の補助金を交付するよう求めていきます。別問題とされてきた民間空港は、いつの間にか米軍再編と完全にリンクし、その方向性が出るまで動けない状況にあります。愛宕山については、旧国病の移転も本決まりとなり、その他の地域の活用策についても、県と協力しながら岩国の将来にとって望ましい方向性を探っていきます。こうした各種の課題は米軍再編と混同することなく、それぞれ着実に解決していきます。4、周辺地域への対策
高齢化や過疎化に悩む周辺地域に住む人々の想いも、もちろん私にとっては大切な「民意」であり、全市民共通の課題として考えていきます。少しでも問題を解決し豊かな自然と文化に恵まれた周辺地域の魅力を活かすことなくして、岩国市のまちづくりは語れません。情報の格差をなくし高速インターネット環境を整備するため4年計画でケーブルテレビ網の全域への拡充、地域のバス交通システムの見直し、防災無線等の整備を計画的に行います。さらに、団塊の世代の大量退職を間近に控えて、農林業の後継者を確保するとともに人口減少を少しでも防止するため「UJIターン」対策を積極的に進めます。
5、この身を挺して
岩国は大きく動き始めています。基地に過度に依存することなく、苦しくとも自立し、自らの知恵と勇気でまちの未来を切り拓く、市民がまさに主権者としての意識に目覚め、自ら考え、行動するようになりました。
これは時代の大きな流れであり、もはや何人も止めることはできません。古いものが様々なあつれきとなって立ちふさがってきていますが、それを乗り越えたところに、何よりも市民の心が大切にされる品格と誇りのある岩国があり、世界文化遺産への登録を目指している錦帯橋に象徴される歴史と文化、自然豊かなまちがあります。
今は、市民が分裂し、相争うときではありません。真に岩国の行末を想うなら、心を一つにするときです。
私は、あくまで市民を信じて、ともに築いてきた岩国の民主主義と自治を守るため、この身を挺して戦う覚悟です。これは市民の皆さん自身に与えられた試練でもあります。未来のために勇気を持ってともに立ち向かいましょう。
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