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宮城康博blog

沖縄・自治・徒然…Ten Thousand Light-Years from Home

名護市長選挙で問われているのは、島袋吉和氏の「合意」である

 おそらく、名護市長選挙で現職が当選しない限り、名護市辺野古への新基地建設は消えたといってもいいのだろう米国は簡単には諦めない。私の願望が判断を誤らせている可能性大。)1996年のSACO合意から13年、市民投票から12年が過ぎた。思えば、1997年12月21日に行なわれた市民投票の結果とは真逆の受け入れ表明をして当時の比嘉鉄也氏が辞任(12月24日)したことで、名護市政は混乱し続けてきた。

 私は比嘉鉄也氏の辞任はセルフリコールだと表現するが、違う立場からは政府に重責を押し付けられ辞任した憂郷の士のごとく受け止められている。名護市からの風の便りでは、今回の市長選挙では、その比嘉鉄也氏が前面に出て現職の選挙運動をしているということである。

 比嘉鉄也氏は演説が上手で、人情話も交え浪花節で人心を掴む術に長けている。演説を聴いた方の感想をもとに私なりに推理すると、比嘉鉄也氏を中心とする現職陣営は逆風を有利に生かすべく、新基地建設を名護市に押し付けてきた政府に対する市民の素朴な憤りをテコに、基地建設問題を争点からずらしている。基地建設問題がクローズアップされればされるほど、有利になりうる。比嘉鉄也氏、おそるべきである。

 この選挙、明らかに「辺野古に基地はいらない」とする稲嶺進陣営に追い風は吹いているが、選挙としては比嘉鉄也陣営は決して負けてはいない。ほんとうに予断を許さない状況だと思う。現職が当選したら、日米交渉の場で米側に最大限活用され、「民意」を言い募る日本政府側は苦しい立場に立たされる。辺野古へ舞い戻る道は隘路だが残る。その隘路道を開くのか否か、名護市長選挙は重大な選挙となった。隘路という判断も然りである)

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 前回のエントリーで紹介した新聞紙上の二人の候補者の発言をみてみる。

普天間移設の考え方は。

Yosikazu普天間の危険性除去にはどうしても移設しなければいけない。県外移設がベストだが、政府は結論に至らず残念だ。一日も早い結論を出してほしい。国の専権事項としての防衛を地方自治体の選挙に任せることは間違っている。過去3度の市長選で民意は出た。政府は結論先送りの方針を決めたが、民主党衆院選で県外、国外移設と言って戦っている。早めに結論を出してほしい。無責任だ」

Susumu基地問題名護市は13年も市民を二分する形が続いてきた。私は地域に住んでいる人たちの意見、言葉を聞いて辺野古の海に基地は要らない、造らせてはいけないと思った。政権は県外、国外移設を言ってきたわけだから、守らないと投票した人たちへの裏切り行為になってしまう。国が国防の選択を自治体に押し付けるのは問題だが、名護市民のメッセージを送るチャンスだ。ぜひ勝たなければならない」

前回と繰り返しになるが、現職がいう「移設」は「建設」以外の何物でもない。この期に及んで、県外移設を言わないのは、どうせ辺野古に舞い戻るしか道はないと見越しているのである。このわずか176文字のなかで、政府の無責任を攻めるのに言葉を費やしているのは、政府の無責任さに対する市民の憤りの中に自らを埋め込むためである。

稲嶺氏は、「国が国防の選択を自治体に押し付けるのは問題」だと、一定程度、その現職の言論に理解を示している。素朴にはその通りだが、この論は危険極まりない。それは過去3度ともそうであった。そして3度目は市長選挙で「反対」しその後V字案で合意したことで今日の事態になっているのである。そこに言及しなければ、現職の責任はうやむやで国の問題のみがクローズアップされることになる。

比嘉鉄也氏が行なったことと、岸本建男氏が行なったことは違う。同時に岸本建男氏と島袋吉和氏が行なったことは違う。それぞれを論理的に整理し切り分けないで、一連の連続性の中に置くことは危険極まりない。

―市の活性化について。

Yosikazu「北部振興策も10年続き、成果が出ている。第1号の食肉センターは約150人の雇用を生み、利益を出している。国内唯一の情報・金融特区を生かし、28社、950人の雇用を生んだ。今後もトップセールスで企業を誘致する。農業にも力を入れる。高齢化傾向だが、若返れば名護は素晴らしい地域になる。水産物直販所を拡大し市街地と連携して、観光客を呼べる場所にしたい」

Susumu「北部振興策で、10年間で800億円近くが投資、投入されたが、失業率はワースト。どれだけ振興に効果を挙げたのか疑問だ。持続的に発展していくものがないと駄目だ。持続する中で力を付け、ステップアップする必要がある。具体的には、福祉の分野は雇用の吸収力が大きいと言われている。経済面での展開だけではなく人を支える、そして支えられる世界をつくっていく」

1996年から島田懇談会事業で821億円、2000~07年度に北部振興事業等で676億円が沖縄に注ぎ込まれた。それでいて名護市の中心市街地をはじめ空洞化は著しく、土木建設業者の倒産も相次いでいる。基地建設に付随する政府財政支出に頼る公共政策は地域振興の観点からは失敗しているのは火を見るより明らか。

おそらく現職陣営も、その現実は知ってはいるが対策も変えきれるビジョンもない。地に足を付けて公共政策をまともに考えなおさなければ名護市は衰退するだけである。もとより名護市名護市単独であるわけではない、近隣町村や沖縄という地域全体のなかでの位置づけも明確にし、あらたな地域振興ビジョンを持つべきである。比較優位である豊かな自然を活かして、観光や農林水産業等を大切にした内発的発展の方向にシフトすべきだろう。

行財政改革について。

Yosikazu「モットーは市民サービスの充実だ。5年目のことしで50人の市職員削減が可能になる。削減後も民間委託などで市民サービスに後れを取らないようしたい。具体的には財政指数や公債比率が減っている。公債比率は20・7%から15・5%に減った。市民サービスもスピーディーな対応を心掛ける。総合運動公園などスポーツアイランド構想をみんなで考え、活力と元気あるまちをつくりたい」

Susumu「名護は市域がとても広く、生活インフラや学校、保育所も人口の割には数がどうしても必要になる。その分金が掛かる面はある。改革は減らすことが目的になりがちだが、減らすだけではどこかにひずみが出る。浮かせた分は福祉などを手厚くすべきだ。市役所の職員だけでまちづくりはできるはずはない。地域の人材を活用することで補う。ワンストップサービスの女性専用窓口もつくる」

名護市は間違いなく土建市政で普通建設事業の比重が高い。今後は不要不急の公共事業はもとより公共工事そのものが減じていく傾向になるのは明らかであり、これまでの市政運営は改めなければならなくなる。基地建設問題で市政が政治的に歪められてきたが、その問題が終焉すれば、市役所にも市井にも優秀な人材は大勢いる。無駄をなくし市民サービスを拡充する方向で立て直すことはできる。

―その他の施策は。

Yosikazu「振興策を利用して、1億円を救急ヘリ支援に回そうと考えている。12市町村の了解が必要だが、了解を得たい。循環器センターもでき、産婦人科の問題にも取り組んで安心して住んでもらいたい。福祉はことしシルバーセンターができた。内容を充実させ、元気ある老人の経験を借りたい。教育は小中一貫や中高一貫を目指す。名桜大の公立化を支援し、優秀な人材を全国から集めたい。沖縄高専とも産学共同で取り組む」

Susumuまちづくりは10年、20年のスパンで考えなければいけない。まちづくりは人づくりで、教育への取り組みが必要だ。幼児教育から始まり、義務教育の段階でしっかり支えていく。また公民館を中心にした地域力が子どもを支える。地域にはすごい人たちが多くいる。区長を中心にその人たちと子どもたちをつなぎ、かかわらせることで信頼関係、尊敬が成立する。地域力の強さで非行や犯罪は出ない」

救急ヘリについても、浦添総合病院にあるドクターヘリの稼働率等とあわせてトータルにみていかなければならない。「振興策」を魔法の小槌のごとく考えるのはやめにしたほうがいい。沖縄高専の近傍に巨大基地を作る計画に合意しておいて産学共同とはまともな政策ではない。

稲嶺氏のいう「まちづくりは人づくり」というのが基本であり、まちは人が住むことによってまちである。そこで住み、いのちを育みたいとする人々が、米軍基地とは共生したくないと言っているのに、それを誘引する現職市長を当選させてはまちづくりはままならない。

そのことはこの12年のあいだの名護市の現実が教えてくれている。「振興策」が求められ施され、それでも失業率はワーストで倒産は相次いでいる。

[E:sign03]

稲嶺進氏の当選で、1998年2月に岸本建男氏が宣した「ノーサイド」が、ほんとうに名護市に訪れることを祈っている。1999年に稲嶺恵一県知事が名護市を軍民共用空港の建設地と名指ししなければ、名護市においてはこの問題は終わっていたはずだ。

本日の琉球新報二面に、連載「呪縛の行方」24が掲載されていた。その中で、島袋吉和名護市長が2006年にV字案で合意したことに対する稲嶺恵一氏の言葉がある。

「沖縄も一枚岩ではなくなった。誤算だった。私の力足らずというか、国の権力、パワーの強さというか」(稲嶺恵一前沖縄県知事)

現職の島袋吉和名護市長は、条件付で政府と対峙していた(稲嶺恵一前沖縄県知事言うところの)沖縄の一枚岩を壊し、防衛庁と合意した人物である。稲嶺進氏の陣営は、島袋吉和氏が行なった合意をこそ問い、この市長選挙ではっきりさせるべきである。

私は合意していない。

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