宮城康博blog

沖縄・自治・徒然…Ten Thousand Light-Years from Home

佐藤学の6月の時評

下記は、本日(6.30)の琉球新報11面に掲載された佐藤学の6月の『時評』である。

新報のWeb版には掲載されていないので、大事な論考であり広く周知される必要性があると思い、勝手にアップする。

-------------

【時評2014】6月

集団的自衛権行使容認 国民の無抵抗深刻 辺野古阻止」で日本正気に

佐藤学沖縄国際大学教授)

 

安倍政権による集団的自衛権行使容認の閣議決定が迫り、日本が現行憲法の下で維持してきた国外で軍事力を行使しないという基本方針を捨て去る日が近づいている。閣議決定に「専守防衛」という文言を盛り込み、「戦争をする国」にするのではないと強調し「積極的平和主義」なる標語を掲げることで、安倍首相は、この解釈改憲が現状からの大きな逸脱ではないかのような装いを持たせている。しかし、戦争をするため、米国と共に軍事行動をするための集団的自衛権容認である以上、「戦争をする国」にしない、とは自家撞着(どうちゃく)も甚だしい。

多くの問題を議論しなければならないが、最も深刻であるのは、日本国民がこれを大きな反対も抵抗も無く、受け入れていることである。安倍政権支持率は、依然として高水準を維持し、特定秘密保護法から続く国家主義的政策への反対は弱い。それは、自民党に対抗する実効性のある野党がいないことからも明らかである。公明党が、党是であった平和主義の立場から自民党を止めるとの期待が一部にあったが、小選挙区制主体の現在の選挙制度で政権離脱はありえず、対抗野党が無い以上、自民党公明党票が絶対に必要という状況でもなく、最終的に自民党に迎合することは自明であった。

危険な投資

ここまで安倍政権の思うままに進んできた背景には、東日本大震災以後の国民の大きな不安が潜伏してきた状況がある。わずか3年前に、生活の存立基盤を疑わざるをえなくなった日本国民は、それを忘れる努力を必死にしてきたとしか思えない。高い可能性で大きな地震が襲うことが予想されている東京で、オリンピックを開催し、それに向けての公共事業が経済成長の「矢」とされているのは、正気の沙汰ではない。

アベノミクス」の頼みの綱が株価のみになっていること、そして、株価が上がれば国民は他の何も考慮しないこと、その顕著な証拠が、「経済戦略・骨太の方針」の中に含まれた、130兆円を株式市場に流入させるという「年金積立金管理運用独立行政法人」の株式運用拡大への反応である。利回りの高さを求めて、危険性の高い投資をすれば、元本を失う恐れがあり、公的年金は、運用の安全を旨とすべきという大前提がある。米国では、ブッシュ前大統領が、2005年に社会保障国民年金の「民営化」を主要政策として実現を目指した。連邦政府が一元的に運用し、主として米国債を購入している社会保障基金を、段階的に民間の投資ファンドに運用を移し、株式市場への投資を可能とする方針であった。この時点で、米国はいまだサブプライム・ローン危機の表面化から遠く、株式市場は活況を呈していた。「民営化」による運用益増が見込まれた時期である。しかし、この政策は国民の反対でつぶされた。「投機資本主義」万能の米国で、そのピーク時ですら、年金運用はリスクを取るべきでない、という健全な議論が勝ったのである。ちなみにブッシュが成功例として挙げた80年代の軍事独裁政権化のチリにおける年金民営化は、08年に大幅修正がなされた。 

非軍事に特化を

翻って日本ではこの問題にどれだけ国民が関心を寄せているのか。年金記録の不備が大きな選挙争点になったのは、わずか7年前のことではなかったか。現在の無関心は、国民が刹那的になっている明らかな証拠である。

安全保障問題でも、冷戦時代には経験のなかった「敵」との直接的軍事衝突の可能性の前に、国民は不安ゆえの判断停止に陥っている。ひたすら不安であり、それは米国に付いていくことだけで解消できると誤解し、その結果が、米国への貢物たる辺野古新基地建設強行を大方の国民が支持する現状である。

集団的自衛権行使により中東で米軍と共に軍事行動をとるとは何を意味するか。それは、即、東京がテロの対象となる事態を意味すると、国民は分かっているのか。米軍を引き込むつもりで中国と尖閣をめぐり軍事衝突を起こせば、全てを賭けた株価がどうなるのか考えているのか。私たちは、諦めず、今こそリアルな安全保障議論をしなければならない。軍事攻撃で危機を解決できる場合もあるだろう。しかし、はるかに多くの場合で、軍事力は事態を悪化させてきた。イラクの現状がその何よりの証しである。日本は、非軍事的貢献に特化するという覚悟を、今からでも決め直そう。少子高齢化財政赤字増大、という条件下で、軍事力にどれだけ金を注ぎ込めるというのか。

日本を覚醒

最後に強調したい。私たちが辺野古新基地建設を認めない立場を貫くことは、日本を覚醒させることになる。嘉手納飛行場・弾薬庫だけで、横田、厚木、岩国、横須賀、三沢各米軍基地の合計面積の2倍以上あり、全ての「基地」が集中する沖縄島よりも面積が大きい単独の「市」が日本には13もあり、24の都道府県は、沖縄島の5倍以上の面積があり、朝鮮半島有事には、北九州、山陰が沖縄よりはるかに近く、オスプレイを使うには、佐世保配備の強襲揚陸艦が必要である。よって沖縄県内に新たな海兵隊基地は必要ない。辺野古は意味が無い。現実と事実に基づいた政策を訴え、辺野古を止めることが、日本を正気にする最後の機会かもしれない。

f:id:nagonagu:20140630214658j:plain