宮城康博blog

沖縄・自治・徒然…Ten Thousand Light-Years from Home

合意形成システムが欠如した南城市

これからここに書いておくメモは、事情を知らない人にはずいぶん不親切な断片的なメモになることをお断りしておきたい。

私が現在住む、南城市の大里庁舎の件についてである。

南城市は12年前に1町3村が合併してできた沖縄島南部東側の市である。今年、明後日(1月14日)に市長選挙が告示され21日には新市長が決まる。

南城市は合併後初の市長選挙で現職市長が当選して以来、3期連続当選(3期目は無投票)で来た。ゆえにかどうかはなんともいえないが、かなりワンマンな市長で、私は昨年、公立保育所全廃問題で保育園関係者や保護者の意見をまったく聞かない南城市の体質にびっくりした。南城市は合併当初から市立保育所を民営化する方針を立て、その基本方針では公立は一箇所残し、保育の質の確保と行政の保育に関する責任を果たすみたいになっていた。それがなんら関係者や市民に問われることなく方針が廃棄され、最後の一箇所を民営化するというのだから、関係者がびっくりするのは当然である。結局、市当局の思惑通り、公立保育所は全廃されることになったが、それまでの10数年にわたる民営化の過程で、すべての土地と建物が違法に処理されていることも私の指摘で明らかになり、市と市議会は全ての事案を遡及して議決処理するという失態を演じた。さらに私がびっくりしたのは、公立保育所を残してほしいと市に要望書を提出した市民(署名者)に対して、市長自らが架電するというとんでもない人権侵害を行なっていたことを市議会で市長自ら発言したことだ。さすがに問題だと思ったのか、市議会における市長発言はとんでもない言い訳を繰り返し二転三転した。さらに驚いたのは、市議会ではこのような市長発言が問題となって空転することもなく粛々と進行していることだ。議会として機能しているのかどうか疑念を抱いた。それらがすべて、保育所民営化の際に違法行為を続けて当局も議会もだれも気づかないという南城市の実態なんだと思うしかなかった。

と、ここまでが前置きで、大里庁舎の件にうつる。

南城市は現在、合併前の大里村と玉城村の庁舎を使い主に行政を行い、知念村と佐敷町は市民課出張所となっている。新庁舎がもうじき完成するが、すべての行政を新庁舎に統合し、市民課出張所等は廃止される方向性のようである。そこで問題になるのは、現在「行政財産」として使用している大里庁舎と玉城庁舎の行方だ。

市民の間では大里庁舎を南城市にはない本格的な市立図書館などの「公共施設」として活用してほしいという声がある。市立図書館を望む声は、合併後に総合計画基本構想をつくる際にもアンケート等で市民の声としてあがっており、懸案事項であるという認識を南城市は持っている。だが、新庁舎建設に伴い遊休施設となる大里・玉城庁舎をそのように利用することを含めて検討した形跡がない。

南城市一般財団法人地方自治研究機構と共同で『公共施設を活用した地域活性化に関する調査研究』を行い、2015年3月に報告書を発行している。委員に当時の副市長(座波一)、事務局には南城市総務部長と企画部および総務部庁舎建設室長らが参画しており、報告内容は南城市も十分承知して責任を有していると考えるべきだ。

この報告書の「調査研究の背景」では新庁舎建設に至る経緯が述べられた上で「遊休施設となる玉城庁舎と大里庁舎は企業誘致による若年層の就労環境の充実を軸とした市の発展に資する利活用を行うことが望ましい」と断定されている。はじめから企業誘致だけが基本の方向性だったとしかいえない。

報告書の124〜125ページは、「(2)民間利用に係る法制度からみた課題」が記されている。それによると下記の通りである。

①普通財産の貸付方式
南城市には、財産の貸付に関して「南城市財産の交換、譲与、無償貸付等に関する条例」が制定されているが、事業所に対する有償貸付を想定した条例とはなっていないので、本条例の改正又は新たに条例を制定することを検討する必要がある。
②行政財産の使用許可方式
…大里・玉城両庁舎を経済振興目的の「公の施設」とするための公の施設の設置条例を制定する必要がある。また、その際には使用量に係る条項を設ける必要がある。また、事業所利用としての使用許可は単年度を越える使用を前提とすることになるから、「南城市議会の議決に付すべき公の施設の利用及び廃止に関する条例」等の慣例条例の改正または新たに条例を制定することが必要となる。

昨年12月の南城市議会開会中に、南城市ソニービジネスオペレーションズ株式会社と新庁舎建設に伴う大里庁舎の跡利用として賃貸契約を交わしたと報道された。現在は市のホームページでもそのことは掲載されているが、この件について議会開会中でもあり、議会はなんらかの議論をしたのかと関係者にたずねても「ない」ということである。

地方自治法237条では財産管理について下記のように定められている。

(財産の管理及び処分)
第二三七条 この法律において「財産」とは、公有財産、物品及び債権並びに基金をいう。
2 第二百三十八条の四第一項の規定の適用がある場合を除き、普通地方公共団体の財産は、条例又は議会の議決による場合でなければ、これを交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けてはならない

先に見た報告書で、貸付方式で条例について言及されていたが、南城市ではこの件に関してなんら条例の改正や制定が行われてはいない。議会の議決も経ないで、賃貸契約を交わしたことは問題ではないのか。

いろいろ考えながら、南城市の条例等も調べてみて「南城市財務規則」を発見した。

第118条 財産管理責任者は、その所管に属する普通財産を貸し付けようとするときは、普通財産貸付協議書(様式第43号の2)に関係図面及び契約書案等を添えて、上司の決裁を得なければならない。
2 普通財産の貸付けを受けようとする者は、普通財産貸付申請書(様式第43号の3)に利用計画書又は事業計画書を添えて提出しなければならない。
3 普通財産の貸付けをしようとするときは、次に掲げる事項を記載した契約書によらなければならない。
(1) 借受人の住所及び氏名
(2) 貸付財産の明細
(3) 貸付けの目的
(4) 貸付期間
(5) 貸付料の額
(6) 貸付料の納入方法及び納入期限
(7) 貸付けの条件
(8) その他必要と認める事項

新庁舎移転後の大里庁舎は「行政財産」から「普通財産」に用途が変更される。であるから、この「南城市財務規則」を根拠に有償貸付が可能だというわけだ。

しかし、大里庁舎の跡利用に関して、南城市民は一切、市から問われていない。法令上はただちに違反とはいえないとしても、これほどの公有財産の用途を市民の声、市民代表たる議会の議論も経ないで決定することは果たして妥当なのか。公立保育所全廃問題の時にも如実に現れた、南城市政の傲慢さではないのか。

このあと問題として出てくるのは、大里庁舎をソニービジネスオペレーションズ株式会社に賃貸するとして、そのための設備投資はだれがするのか。貸し主である南城市が行うのだとしたら、いかなる根拠で予算を拠出するのか。南城市は不動産業を始めるのか。南城市の若者の働く場の創出という謳い文句にしても、非正規雇用契約社員であり、働く環境、生きていく地域環境は不安定なままである。その費用対効果をどのように考え、行政が担うべき市民の暮らしを守る仕事とのバランスをどう考えるのか。議会が議論しなければならないことは山積みなのにその議会が、当局からの情報を漫然と待ってるだけでまったく機能していない。

公立保育所全廃問題の時に、私は南城市には「合意形成システムが欠如」していると指摘した。あれから気になって南城市の現状についていろいろ調べたが、総合計画策定や都市計画区域指定や諸々で計画行政をしっかりと進めている職員の諸活動は評価するが、庁内での合意形成と成果評価システムで満足していて、肝心要の市民との「合意形成システム」がまったく欠如している。これでは民主的な市政だと言えない。

そのことが、この大里庁舎の跡利用でもはっきりとみえた。一般財団法人地方自治研究機構との共同研究時には、「普通財産」が「南城市財務規則」で有償貸付できると知らなかったわけではなく、これほどの公有財産なのだから、慎重に手続きを踏むべきだと思慮した識者や機構側の意思があったのかもしれない。

南城市には、そんな気などさらさらなかったということなのだろう。

市長選挙の渦中だが、南城市有権者はこのような南城市のありかたに審判を下す必要がある。そうでなければ、南城市はますます市民の声など聞かない傲慢な市政運営を深めるだけだろう。