宮城康博blog

沖縄・自治・徒然…Ten Thousand Light-Years from Home

IMPACT考

Impact_event

前々回の記事(「影響」と「負担」の間の穴)のブックマークコメントで、はてなid:buhikunさんが書いている。

buhikun: 「負担」とは「債務」であり、債務者の(受動的)義務を伴う。これに対し「影響」は、単に因果関係ある事象を示すに過ぎない(激怒) 2011/06/30

Fecebook では、オーストラリアの友人がコメントしてくれた。

Ken-Julia Yonetani  直訳して、「インパクト」を「衝撃」にしたらどうでしょ​う?
7月1日 16:08

“the impact” を「負担」と訳すのは、政治的意訳だろう。外務省が公開している日本語の合意文書には仮訳とあるから、日米合意された正式文書は英文の方であり、日本政府側がこれまでは政治的意図をもって「負担」と訳していたんだろう。そのような政治的意図を廃して「影響」と訳したのが今回の「2プラス2」の合意。

ケンとジュリアの提言を受けてから、辞書を調べてみた。

impact
[名] /mpkt/ [U][C] 1 影響,効果;感化  have [make] an impact upon ... …に影響を与える.2 (物体と物体の)衝突;衝撃;突き当たる[ぶつかる]こと;衝撃 ...

「衝突;衝撃」という意ではなく「影響」という意でインパクトという言葉を日米両政府は使用したのだろう。そのことを疑うものではないが、しかし件の外務省の役人さんがおっしゃる「事象は一緒だが、表現する英語として違う」の如く言うなら、「事象が一緒なら、表現する日本語としては違う」というほかない。軽減されるべき沖縄における米軍基地の在り方は、単なる「影響」ではなく「衝突;衝撃」である。

1996年に日米合意して未だにできていない「普天間返還」は、それが沖縄県内への「移転」という条件付きだからである。この14年余も沖縄県民の民意と日米両政府の合意は「衝突」し続けてきた。そのことを続けるという今回の「2プラス2」の合意文書に刻まれる“the impact” は、「衝突;衝撃」という意味を当てるしかない。

〓「含まれる including 」ことの「衝撃 impact 」〓

impact が与える衝撃は大きく。それは収まる様子はなく深く広く拡大し続けている。

1972年に「沖縄」の施政権をアメリカから返還された日本政府は、沖縄を日米安全保障条約体制の中に including した。米軍の銃剣とブルドーザーに抵抗してきた沖縄は、1972年以降は民主主義体制であるはずの日本国家のなかの一員として政府権力に向き合わなければならない。日本国の法制度の中で「沖縄」がどのように扱われ続けているかは、国会における駐留軍用地特措法の改悪が圧倒的多数で行われる状況に端的に表れている。沖縄は日本国家に包摂され憲法に規定される主権者の位置を与えられはしたが、国会において圧倒的少数者として無権利状態の如く扱われている。

1996年のSACOは、そのような沖縄の負担軽減を装いながら、1945年以降半世紀も経て老朽化した米軍基地のスクラップ&ビルド以外の何物でもなかった。その象徴が普天間基地の県内移設である。

沖縄側行政は、1999年に期限や軍民共用などの条件を付けて、その新基地建設を受け入れる。民衆の反発・抵抗は大きく持続的で、建設計画はデッドロックに乗り上げる。そのうえで、沖縄側との折衷案を一方的に廃し、新たに合意されたのが米軍再編で出された現行計画である。

現行計画に対しては、建設予定地である名護市沖縄県も選挙において「反対」を明確にし当選した首長たちである。仲井真沖縄県知事は直近の県議会で「県内移設」そのものを不可能であると反対意思を明確にした。

9日には、民主党の前原氏など超党派の「新世紀の安全保障体制を確立する議員の会」なる国会議員の方々が沖縄を訪問し、普天間代替の新基地建設受入れへの理解を求めるらしい。

日米安全保障体制にincluding された沖縄には、民主主義や自治などない。その国家意思をもって前原氏らは沖縄に来るのである。

大事なことなので二度書いておく。

日米安全保障体制にincluding された沖縄には、民主主義や自治などない。その国家意思をもって前原氏らは沖縄に来るのである。

〓衝突 impact は起こってる〓

日本のマジョリティには、 impact は軍事基地から派生する騒音被害などの「影響」のことであり、それはたまたま沖縄という南西諸島のローカルな島で起こっていることぐらいにしか認識されていないかもしれない。しかし、このような軍事植民地としかいえない「沖縄」を放置・内包し続けることは、日本国の根幹が腐食していることを是認することでしかない。 impact は決して沖縄だけに止まらない。

原発問題も然りである。

「すべての国家は暴力の上に基礎づけられている」。我々は誰も、この impact から逃げられない。

impact を「負担」と訳していた日本政府には、buhikunさんのいう債務という概念があっただろうとおもう。日本政府はそれをやめて「影響」と呼び換えた。

何かが変わった。

それは沖縄の民衆が願う方向の変化でないのは、オスプレイの配備や普天間固定化の恫喝や、高江での強行ぶりをみる限り間違いない。

…戦いは続く。

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