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宮城康博blog

沖縄・自治・徒然…Ten Thousand Light-Years from Home

沖縄県知事選挙における二人の候補の政策骨子をみる

現職で二期目をねらう仲井真氏と、挑戦者である新人の伊波氏、それぞれの県知事選挙に臨む政策も出揃った。落ち着いて、両候補の政策を吟味し見比べる時間もないので、新聞紙上等で端的に表れてる違い・印象などをメモしておく。

いうまでもなく、今回の県知事選挙の最大の争点は、普天間返還および「県内移設」の問題である。沖縄の頭越しに決定された日米合意に対して、沖縄の明確な意思が選挙という民主主義システムを通してどう表出するのかということが問われている。

琉球新報が、二人の政策骨子をまとめ紹介しているので、それを参照したい。

Nakaima_policy_2仲井真氏の政策骨子は三つの柱で構成されている。

  • 希望と活力にあふれる「豊かな美ら島・おきなわ」づくり
  • つながり支え合う「住みよい美ら島・おきなわ」づくり
  • 世界に開かれた「交流と共生の島・おきなわ」づくり

政策発表の場では、基地問題について「県外移設を求める」などと発言したようだが、政策骨子をみる限りは具体的政策として基地問題には触れられていない。
仲井真氏の同問題についての発言は、常に主体性を欠いており、県内移設を認めていたことも、名護市長が条件付で認めていたからと発言して恥じないほどである。1999年に仲井真氏の前任者である稲嶺県知事からの要請を受けて名護市は条件付で受け入れたのである。名護市が受け入れているから県内移設を認めていたというのは、本末転倒も甚だしい。

1996年のSACO合意以来の経緯を振り返れば

  1. 大田革新県政ですらが「一義的には市と国の問題である」としていた。
  2. 97年の市民投票の結果を受けて沖縄県は反対を表明する。
  3. 98年の選挙で当選した稲嶺県知事が「県民の財産」として普天間代替=軍民共用空港を主張する。
  4. 99年に稲嶺県知事が当時の岸本名護市長普天間代替=軍民共用空港の建設受け入れを要請し、名護市が99年12月27日に条件付受け入れ表明。
  5. 翌12月28日に沖縄側からの条件を受け入れる形で政府は基本方針を閣議決定

このような経緯を経てもなお、遅々として進まない建設計画を、「米軍再編」日米協議を通じてご破算にして、軍民共用ではなく軍事専用で二つの滑走路を持つ現在の建設計画で「日米合意」はされたのである。

仲井真氏の言い分は、自身が沖縄県知事に就任した時点では沖縄県ですら頭越しで認めるわけにはいかないとしていた「日米合意」を、島袋名護市長が政府と基本合意したことを追認していたということだろう。その名護市も変わった、仲井真氏は沖縄県知事として自身の判断をしっかりと示す必要がある。今回の県知事選挙において、「県外を求める」程度の表現で留めているのは、県知事に当選したとしても「基地建設問題」に関しては主体性を欠き政府に押し切られる可能性を大いに残すものである。

仲井真氏は「日米合意」(=新基地建設)を実現する隘路をきりひらくだろう。

[E:sun]

Iha_policy 伊波氏の政策骨子は三つの柱で構成されている。

端的な言葉は、それぞれ産業経済政策や福祉政策、そして基地問題解決の指針を示している。
【実現】は産業経済政策であり、「沖縄版ニューディール政策」と名づけられている。小さな政府を目指す新自由主義的政策からの転換が志向されていることが伺われる。【共生】は福祉【決断】は基地削減である。【共生】の項目で「米軍占領」に言及しているのは、現在を単なる現在ではなく歴史的な変遷の結果としての現在と捉え、【共生】【決断】ともに「要求」で結ばれているのは、政府の責任を明確にし交渉していくという意思の表れであろう。

仲井真氏と大きく違うのは、「米軍普天間飛行場の県内移設に反対」と明確に主張していることである。新聞報道等では、「県外・国外」や「グアム」の文言が位置づけられていないのは支持政党への配慮とされているようだが、沖縄の要求は普天間の閉鎖・返還であり、どこに移転するかは日米両政府が苦慮することである。そこに巻き込まれ、対案なき反対は無責任などという(それこそ沖縄に基地を押し付け続ける側の責任を棚上げした)レトリックに付き合う必要はない。

伊波氏の宜野湾市での行政実績が、そのまま県政における行政手腕になりうるかは未知数だが、普天間返還問題における沖縄側のこれまでの交渉スタイルは限界に達し破綻しているのは明らかである。軍民共用も使用期限も、すべてが水泡に帰したのが日米合意である。保守派がリードしてきた沖縄の存在は、その程度としか認識されていない。沖縄は主張を明確にすることで、日米両政府に仕事をさせなければならない。伊波氏が当選することでしか、日米両政府が合意を見直す契機はない。

伊波氏は日米合意(=新基地建設)の隘路を閉ざし、見直しせざるえなくさせるだろう。

[E:typhoon]

民主党国民新党が、独自候補擁立ですったもんだしたが、政権が自公時代と同じかもしくはそれより惨い結論に達したといっていい現在、当然起こり得るすったもんだであった。

民主党県連がこの間のすったもんだで出した、日米合意を「尊重」するという主張は、いかにその後に続く「レビュー」のテーブルをつくるためのレトリックだと強弁しても、それはレトリックでしかなく、変節していることを覆い隠せるものではない。民主党県連は、党本部幹事長のもとに政策協議する場をつくったらしいが、民主党県連が沖縄県民の意思を代表するものであるかは心もとない。去った衆院選における「国外少なくとも県外」という言葉に期待した県民を裏切った民主党であることは否めない。しばらくは、ねじれと混乱と停滞が続くだろう。

政府・民主党は、武器輸出三原則の見直しや、南西諸島(与那国島)への自衛隊配備など様々な方針を打ち出してきている。県知事選挙とは別に、沖縄選出の民主党議員や民主党県連が、そのような防衛問題に対してどのように反応できるかは大きく問われるだろう。

個人的には、尖閣の問題も含めて海上保安庁の拡充で対処できそうな問題を、なにゆえに軍隊(自衛隊)を動かすのか危なっかしくてならない。政治の貧困は、やがて底が抜けるのではないだろうか。心して、行動し発言するときを見誤らないようにしたい。

[E:cloud]

仲井真氏は、「わが国が国際社会において果たすべき責務・役割の一翼を担う決意」と政策骨子の中に位置づける。

この言葉だけを取り出してみれば、大田革新県政が「国際都市形成構想」を策定していた時代に、沖縄を位置づけていたビジョンのなかに置かれてもおかしくはない。おそらく、ポスト沖振計のなかで策定した「沖縄ビジョン」を意識して仲井真氏はこのような言葉遣いをしているのかもしれない。

しかし、沖縄に新たな米軍基地を建設する日米合意を成し、先島に自衛隊配備をしようという現在の日本国の動向の中で、沖縄が「(国の責務・役割の)一翼を担う決意」と宣することは、「沖縄ビジョン」とは真逆のニュアンスを持って立ち上がってくる。仲井真氏は「県内移設」やる気満々だと捉えられてもおかしくない。

仲井真氏には悪いが、沖縄のトップリーダーであり続けるには、複雑な政治・社会状況の中で、言葉が持ちうる力に対してあまりにも鈍感過ぎないだろうか。

ポスト沖振計(※)の一歩をしっかりと踏み出すためにも、沖縄の主張を明確にして政府と交渉していかなければならない。復帰時の「幻の建議書」の精神を幻と捨て去ることなく、沖縄はその時々の状況に対峙しながら歩み続けていく必要がある。

[E:end]

※1972年の復帰時から3次に渡って続いた沖縄振興開発計画体制を受け継ぎ、2002年から10年期限で行われた沖縄振興計画。来年度には期限が切れ、新たな制度が求められている。そのため、沖縄県は「沖縄ビジョン」を策定している。復帰時から始まった沖縄振興開発計画は、沖縄のインフラ整備に大きく貢献したが3次振計からは基地維持政策としての側面も指摘されている。ポスト沖振計が、復帰時から続く振興計画体制の問題点を是正し、米軍占領下から続く沖縄の問題を解決し真の自立に寄与するかは重要である。