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宮城康博blog

沖縄・自治・徒然…Ten Thousand Light-Years from Home

「沖縄論」を論ずる-有朋自遠方来 不亦楽

Okinawaron_okidai  先週の土曜日、沖縄大学で『沖縄論』に関するシンポジウムが開催された。
 沖縄国際大学佐藤学教授からのお声掛かりで、読者代表として私も召集されたので、いそいそと出かけてきた。

 第一部が、宮本憲一先生の基調講演。そして私の問題提起。

 第二部が、川瀬光義先生がコーディネートするパネルディスカッション。パネリスト(敬称略)は、佐藤学、桜井国俊、真喜屋美樹、砂川かおり、島袋純、そして高原一隆。

 『沖縄論』の共著者たちが予定を上回り8名も揃うというシンポジウムだった。

 シンポジウムの内容は、沖縄タイムスで報道されたのと、ブログ“「癒しの島」から「冷やしの島」へ”でも紹介されている。ぜひお読みください。

 続きを読む以降に、私の覚書を記しておく。

[E:pencil]

 私の「問題提起」のレジュメ→「okinawaron_miyagi.pdf」をダウンロード

 最初の「問題提起」は、少しあがり気味で何を喋ったのかあんまり覚えてない。15分という余裕のある時間をもらったので、どうにかなったような気がするが、そうでなかったらめちゃくちゃだったろう。先生方に感謝。

 シンポジウムは、先生方が一人四分ずつ最初に喋るということと、その後は、川瀬先生と唯一の筆者ではない私からの質問にまかされた感じになった。川瀬先生が以心伝心で上手に振ってくれたので、あまり緊張せず率直な質問を投げかけることができた。

 私の質問は大きく三つ。[E:one]「環境」について、地位協定三条がある限り日本政府に新基地建設のアセスは無理ではないか。[E:two]「基地跡地利用」に関する土地利用計画などの問題。[E:three]「振興策」について、ポスト沖縄振興計画を見据えた議論を始めなければならないのではないかということ。

 

[E:one]に関しては沖大の桜井先生が、明確に原理的に不可能であると断じた。この問題は根深い。事業者である日本政府は、事業で作られた施設の運用に関する権限を有していないので、環境影響の緒元である米軍の航空機の機材や飛行経路等を厳密には知らない。さらには汚水排水に関しても、航空機の洗浄剤や悪質な物質の流出等についても厳密には知らない。そんな状況で適切妥当な環境アセスができるはずはない。米軍基地の管理運用に関する規定である「地位協定三条」は、日本国の環境影響評価法とぶつかるが、条約が上位なのだとしたら、環境アセスはあらかじめでたらめで適当であることを免れない。いくつかの改善策が考えられるだろうが、小手先の改善では何も変わらない。日本国の「法」が日本国政府と米国政府により骨抜きにされている現状である。議論の裾野と底は深い。宮本憲一先生は、シンポジウムの最後に、この問題に関して「提訴して争うべきではないか」と指摘した。考えなければならない問題である。

 

[E:two]に関しては、真喜屋美樹さんが、沖縄の米軍基地は民有地が多いが、私有地であるからといって地権者たちの組合に任せきりになるのではなく、沖縄県や当該自治体など公的機関が積極的に参画しなければならない旨を指摘した。沖縄の米軍基地の特殊事情と、中南部にこれほど広大な基地を抱えることによる県土利用計画策定の困難さが浮かび上がる。沖縄を基地で喰ってるかのように評する人々もいるが、基地がどれほどまともな地域政策を阻害し腐食し続けているかを知らない。基地が返還されたら、ばら色の経済成長があるかのように論じる気はないが、しかし基地があることによって喪失しているもの抱えている負担の大きさを過小評価してはならない。跡地利用ひとつとっても、利害関係人の調整からビジョンの共有まで、自治体の「力量」が大いに試され続けている。沖縄の「現実」は幾重にもしんどい。

 

[E:three]については、島袋純さんから、沖縄の現状について率直な指摘があった。振興計画等の結果(効果)がチェックされておらず、政治的には右から左まで振興計画については賛成であり、振興計画等を廃することに賛成する自治体の首長は皆無だろうという。宮本先生も指摘するように、二次(80年代)まではインフラ整備等で必要だったろうが、三次(90年代)以降は基地維持のための特別振興になっている。2011年度で終わる、沖縄振興計画の次をどのように展望するのかは大事な問題だ。私は、この《振興宗教》が基地建設問題に絡み、沖縄がグダグダになるのではないかと危惧している。純さんは、中央政府にとって都合がいい振興に頼る沖縄から脱却して、新たなる民衆の連帯(ネットワーク)の再生を標榜する。沖縄は島袋純の仕事を注視し大切にしなければならない。

[E:eyeglass]

 『沖縄論』は「平和・環境・自治」という柱で構成されている。時間切れであまり議論はできなかったのが、「平和」の部分だったような気がするが、現在の日本政府の迷走ぶりを会場にいるみんながみているのだから、環境や自治という具体的・主体的に沖縄が、民衆がどうできるだろうという議論の流れは、「平和」を構築するための大切な一歩だったろう。

[E:flair]

 沖縄県は昨日、2030年の将来像を描く「沖縄21世紀ビジョン」を策定したらしい。これはポスト沖縄振興計画にも関わってくるのは必定。入手して読み込んでおく必要があるだろう。

 沖縄振興計画に関して、国の「沖縄振興審議会総合部会専門委員会」の座長をしていた嘉数啓氏が、名護市にある名桜大学の新理事長に就任している。そのことが、名護市名桜大学、沖縄にとっていい結果を結べばいいが。

[E:beer]

 シンポジウムを終えて、久しぶりに気心の知れた先生方と小宴を共にした。私はうれしくて、ついついすきっ腹に飲みすぎてしまい、例によって途中でひとり行方をくらまして家路をたどった。失礼をしたのではないかと気になるが、ま、毎度のことなので呆れるだけで怒りはしないだろう。1999年に名護市長が受け入れ表明して以降、とてもしんどいときに、前著『沖縄-21世紀への挑戦』(岩波書店刊)を出版したばかりの宮本先生や川瀬さん、只友さんたちと親しくさせていただくことで、私は大いに救われた。生涯忘れないだろう。今回の『沖縄論』にも感謝である。

有朋自遠方来 不亦楽

[E:end]