みやぎブログ

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「ゼロベース」で沖縄からベース(基地)をゼロに(その2/環境編)

20100205org00m100038000p_size5   辺野古への新基地建設は、生物多様性および種の保存の観点から、重大な環境破壊であると国際社会からも懸念されている。

 最初に建設ありきの方針で進めてきたために、環境影響評価法をはじめ、日本国が持つ環境に関する法・政策の根幹が揺らいでいる。

 在日米軍基地を新設してあげるために、沖縄では異常な状況が続いている。「環境」の側面から問題をできるだけ簡潔に整理してみる。

辺野古沿岸域の自然環境】

 辺野古沿岸域の自然環境に関する最低限の情報を押さえておく。

  • 名護市辺野古沿岸域は沖縄県の「自然環境の保全に関する指針」で、「評価ランク1」に分類される自然度の高い場所である。
  • 辺野古沿岸域のリーフの内側には沖縄島最大の良好な海草藻場が広がり、日本国の天然記念物であり国際保護獣であるジュゴンをはじめ希少種が育まれている。
  • 2008年には国際自然保護連合(IUCN)が三度目となる「ジュゴン保護決議」を行なっている。
  • 辺野古崎北側の大浦湾には新たなアオサンゴ群集が発見されている。(2007.9)
  • 辺野古沿岸域のリーフおよび平島・長島などの無人島は、地域の人々にとって貴重な共有財である。

環境アセス

[E:one]基本的問題

 日米地位協定第三条に基づき、事業で造られる基地の管理・運用権は排他独占的(=外務省解釈)に米軍側が有している。

 環境アセスを行なう事業者である日本国政府・防衛省は、供用開始後の機材等について詳細情報を有しておらず、なおかつ運用等に責任を持てる主体ではない。日本国が主権国家であるのかさえ疑わしい「日米地位協定」の持つ問題の根幹がここに露呈している。

 これでは、環境影響を評価できるわけがないのが道理である。無理が通れば道理が引っ込むの常で、新基地建設の環境アセスは政府の行為で法の根幹が陵辱されている。

[E:two]デタラメなアセスの進め方

 辺野古沿岸域への新基地建設の環境アセスでは、手続きの最中(2008,1)に150ページもの「追加方法書」を出すなど、アセス法第28条に基づき「方法書」を最初からやり直すべきところを無視して書き直しで処理した。

 事業者はわずか1年で調査終了を宣言(2009,3)し、5400ページに及ぶ「準備書」を公表。準備書への意見書は、6000通近くに上った。

 現在は「追加調査」などと称して、「準備書」公告以降に関わらず、複数年調査を求める専門家の意見に対するアリバイの如き調査を続行している。

 事業の一体的な一環であり、環境アセス対象に含まれるべきシュワブ陸域における建物の取り壊しや建設を、環境アセスとは関係なく強引に進行中である。

 あまりにもズサンな環境アセスの進め方に関して、2009年8月にはアセス手続きのやり直しを求める行政訴訟が起こされている。

 事業者である防衛省(沖縄防衛局)は、アセス手続きの最終「評価書」を、沖縄県へいつでも出せる状態であると報道されている。

ジュゴン裁判とJEGS】

 米国政府は辺野古への新基地建設の環境問題に関して、責任主体は日本政府だが米国政府としては環境に配慮し協力していくというロジックで言い逃れ、IUCNのような国際会議でも発言し続けていた。

 2003年9月、米国の「国家歴史保存法」に基づいて、カリフォルニアで起こされた「ジュゴン裁判」では、2008年1月に同法を域外適用して「ジュゴンへの影響を考慮していない米国の行為は違法」であると判決が下された。米国側の「新基地建設は日本政府の行為であり米国は関係ない」という論法は破綻した。米国は主体的にジュゴン保護に関するプロセスを実行しなければならない。

 外務省が公表している在日米軍の「日本環境管理基準」(JEGS)によると、日米の環境に関する法律の内、より厳しい基準を選択するとされている。サンゴや海草藻場を破壊するキャンプ・シュワブでの水陸両用車の訓練のありさまをみていると、JEGSの規定どおりに環境管理がなされているとは到底信じられないが、在日米軍の訓練の実態が検証される必要がある。

【小括り】

 1996年のSACO合意に端を発し、辺野古への新基地建設問題が始まる。たしかキャンベル氏だったと思うが「狭い籠に卵を詰め込みすぎた」という発言に象徴されるように、この計画は都市化した中南部の米軍基地を過疎地である北部に分散・集約することで、沖縄の米軍基地の自由使用を続けるための策であった。

 過疎地は過疎地であるがゆえに、1972年以降の振興開発体制下の凄まじい開発から免れた希少で良好な自然環境が残る。辺野古沿岸域はシュワブをはじめ米軍への提供水域であったがゆえに、さらに開発から逃れてきたという側面がある。

 沖縄県が「評価ランク1」として、厳正に保護されるべき自然環境としている地域に、米軍基地を新設しようと企図したことがすべての間違いの始まりである。日米両政府がそのような間違いを冒したのは、沖縄の米軍基地を未来永劫、自由使用できる軍事基地として残そうという意図に起因する。

 思えば、SACO合意の「海上ヘリポート」が撤去可能であったのは、その意図を隠蔽ないしは希釈するための方便であったのかもしれない。

 しかし、13年も経て、政府と協力姿勢にあった沖縄側の条件まで棄てた現在の新基地建設計画では、いかなる方便も通用しない。日米の沖縄米軍基地の自由使用を永続させるという方針は露呈し、破綻寸前に追い込まれているといっていい。
 
[E:end]

 長くなったわりには、まだまだ触れ切れていない細部がたくさんありますが、「環境問題」の概括をこれで終えます。事業者側の強引なボーリング調査への海上阻止闘争を貫徹した民衆の命がけの行為には触れていませんが、それらの粘り強く徹底した行為がなければ今日の状況はさらに酷いものであったことは火を見るより明らかです。次回は、その他諸々情報を整理しようと思っていますが、まだ主題は考えていません。

 思いがけず、前回エントリが好評だったので、ちょっと無理して急いで(その2)をアップしましたが、次回は来週かな?と思います。

 前回エントリは上記二つのブログに紹介されました。乗松聡子さま、渡瀬夏彦さま、ありがとうございました。

 

 
[E:pc] 《関連サイト》

 関連サイトはたくさんありすぎて、私も把握できていないのが現状です。しばらくしたら、事業者側の一次情報先も整理して下記に追加していきます。

[E:soon]