宮城康博blog

沖縄・自治・徒然…Ten Thousand Light-Years from Home

誘致派の誕生(3―3)【追記あり】

 1997年の市民投票以来、新基地建設への反対と条件付賛成派に二分され、選挙のたびに名護市民は戦ってきた。「過去3度の市長選で民意は出た」と島袋ヨシカズ市長はいうが、沿岸案反対で当選したにも関わらず、同じ場所で拡大したV字合意が「民意」というのは無理がある。基地を押し付けてきた政府ですらが見直しに入っている辺野古移設に固執するヨシカズ市長らの姿勢は、基地の「誘致派」としかいえない。

  これまでみてきた名護市の歴史を振り返りながら、現在・未来の名護市を展望して本稿を終える。

Nago702010_2  1970年に一町四村が合併してできた名護市は、復帰そして海洋博という世替りと開発の荒波に対して「地域主義」を掲げ、自然保護と生活・生産基盤の確立、住民自治を原則にまちづくりをはじめた。70年代から80年代半ばまでは名護市の「基盤整備期」といえるだろう。その時期に名護市総合計画がもっていた「足元を掘る」精神は、ハードとしては市庁舎に表現され、ソフトとしては字史づくりなどの形で地域から学び地域に深く埋め込まれていった。

 1986年に比嘉鉄也市長が誕生し、まちづくりの方向は大型開発プロジェクトを志向する形に180度転換される(リゾートバブル期)。1987年にリゾート法が制定されるなど時代はバブル景気を迎えていた。比嘉鉄也市長はリゾート開発構想を喧伝したが、それらは実を結ぶことはなかった。90年代に入ると全国的にもバブル崩壊を迎え、第三セクターの杜撰な経営体質や破綻したリゾート構想の抱える負債など、全国の自治体でバブル期のツケが深刻な問題となって浮上した。名護市もまた然りである。

 名護市の場合は、その失策のツケを糊塗する新たなバブルが膨らむ。新基地建設およびそれに伴う振興策である。

 1997年の市民投票で名護市有権者は基地建設に「反対」の意思を明確にしたが、「条件付賛成」も37.19%と決して少なくはなかった。そのような状況で、比嘉鉄也市政を次いだ岸本建男氏は新基地建設を「条件付受入れ」していく。その結果、振興策バブルは名護市で膨らみ続けていった(振興策バブル期)。これまでみてきたようにこのバブルは、そのまえのバブルの破綻を糊塗するためにのみ効果を発揮し、今を生きる市民の暮らしや地域社会に広範な好効果はもたらしてない。政策的失敗は明らかである。

 このような状況を不愉快に感じていたのは「反対派」のみならず、沖縄側の条件に振り回される政府のほうでもあった。2006年米軍再編に伴い辺野古移設は見直され、沖縄の条件はすべて破棄され規模拡大し陸に乗り上げる巨大なものになった。名護市で膨らみ続けていた振興策バブルに一定の歯止めをするため「再編交付金」制度も創設された。

 岸本建男市政を次いだ島袋吉和氏は、そのような状況で政府と無条件合意し、「ベストではないがベターな選択」などといっているが、それは稲嶺前県知事と岸本前市長の時代のクリシェであり、島袋氏の合意に適合する言葉遊びではない。あえて言うなら島袋氏の合意は、溶けて消える「バター」な選択である。V字合意がされた(というより再編交付金制度が制定された)時点で、振興策バブルは萎縮する方向に向かったが、政権交代民主党連立政権が誕生した現在は振興策バブルは弾けたとみていい。

 名護市の「誘致派」は1月24日の市長選挙で島袋ヨシカズを再選させることに一縷の望みをつなぐべく必死だが、明らかに時代はコーナーを曲がった。

 名護市における新基地建設問題に終止符を打つためにも稲嶺ススム氏の当選が期待されるが、なによりも、「基盤整備期」「リゾートバブル期」「振興策バブル期」を経て、バブルが弾けた後の名護市まちづくりは、いまだにバブルの夢を見る人々にできるわけがない。稲嶺ススム新市長でしか、市民が共に生きれる明日の名護市をつくることはできない。私がここでまとめた名護市の歴史は1972年に名護市役所に就職した稲嶺ススム氏が歩んできた道であり、故岸本建男氏が歩んできた道である。その問題点も重要な護るべき地点も、稲嶺ススム氏のほうがよく知っている。

Urabyoushi  1997年以来、ほんとうに長くかかったが、地域から学び地域に深く埋め込まれた「足元を掘る」自治の精神が、名護市でしっかりと花開くことを願う。

(了)

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咳まで出てきやがって、ちょっとこじらせそうで恐い。明日からしばらく通常モードで、ときどき更新にします。総合計画の変遷もざっとおさらいしたが、短いスペースでは言及できなかった。それは別の仕事で生かす。…生かせれば生かす、生かしたい、生かせないかなぁ(笑)

【追記】17:20
「誘致派の誕生」をA4版三枚のPDFファイルにしました。選挙運動には市政批判が強すぎて使えないかも知れませんが、プリントアウトしてお読みになる方はどうぞ。↓

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