宮城康博blog

沖縄・自治・徒然…Ten Thousand Light-Years from Home

つまらん「後継」争いなど、酒を飲みながら小ばかにしてるだろう

091228_21420001  我が家は琉球新報を購読しているので、日頃はネットでしか沖縄タイムスを読むことはない。友人からメールで12月27日のタイムス社会面名護市の特集をしていることを知らされた。タイトルは『岸本前市長 移設受入れ表明10年』である。ネットでも一部は読める。

 本日昼食に入った坦々亭南上原店(←とてもおいしいお気に入りの店。大山店は我が家の近く)で昨日のタイムスをもらった。紙面を眺めながら、私は言い知れぬ孤独感を味わった。

 タイムスによると、名護市長選挙の候補者は二人とも岸本前市長の後継者を「自認」しているらしい。

 かつて岸本建男の条件付受入れと戦った私は、タイムスの紙面を眺め戦いに敗れた過去を思い出し孤独感を感じているのではない。そうではなく、タイムスの紙面がつくりだす通俗的な「建男神話」に嫌悪感と寂しさを禁じえず、その深さゆえに孤独を感じたのである。

 『苦渋の選択』という建男さんがもっとも嫌った俗な政治言語が見出しに踊っている。彼は「信念」を持って、もっとも困難な選択をした。私はその選択は間違っていると指摘し続けた。7つの条件付受入れ表明についても、仔細に渡り議論した。ここでその内容を紹介する気はないが、ひとつだけ気づいたことがある。受入れ表明文中の「沖縄県民が基地の移設先を自らの県内に求め」という件に関し、私は「自らの県内に求めている沖縄県民とは誰だ」と執拗に問うたが、議論は噛み合わず平行線をたどった。いま思えば、その沖縄県民とは稲嶺恵一県知事だったのだろう。稲嶺恵一知事からの要請に対して、真摯に検討を重ね下した結論であり当然そう読むべきだった。しかし建男さんはそうは答えなかった。岸本建男とはそんな人だった。

 岸本建男が生きていたら、この基地建設は拒否していただろうというのは、ひとつの「神話」でしかない。そのような「神話」をつくり彼を評価するのは間違っている。

 7つの条件のひとつである「基地使用協定」の中身は、普天間飛行場や嘉手納基地で結ばれている「騒音防止協定」とさほど変わらないものであり、喧伝された市民生活を守るべく地方公共団体と政府が結ぶ画期的な「使用協定」には程遠いものであった。そのことについて議論し、この程度では受入れ表明にあった「住民生活に著しい影響を及ぼさないことであり、それを保証するものとして」の使用協定にはなりえず、市民に約束した「確実に実施されるための明確で具体的な方策が明らかにされなければ、私は移設容認を撤回」するを実行すべきであると追求したこともある。基地建設に反対する立場からする議論を重ねてきた私の感触で言うと、岸本建男の7つの条件はズルズルと後退していき、軍民共用による規模拡大等もあって、最終的には有名無実に近いものであった。

 健康上の理由で勇退することになる時点では、米軍再編による計画見直しがされており、軍民共用や15年使用期限などは反故にされたことははっきりしていた。そのことで岸本建男が、決然と政府に反旗を翻し受入れを撤回することはなかった。政府の進める沿岸案には反対の意思を示していたが、防衛協会の会長(?)でもあった土建市政名護市フィクサーである東開発の仲泊氏が示す「浅瀬案」には一定程度の理解を示していたことも、新聞報道もされている厳然たる事実である。

 まるで、岸本建男ならV字案で合意する可能性は皆無であったかのように言い募るのは、死人に口なしを利用した「神話」でしかない。彼の言っていた「妥協するな」がどのレベルのことだったのかを忖度することはできるだろうが、そのことにどれほどの意味があるというのか。

 現職市長である島袋吉和と岸本建男前市長の決定的な違いは、岸本前市長は基地建設を受入れるに際して「条件」を突き付けたが、島袋吉和にはその「条件」は皆無ということである。岸本前市長は「条件」を政府に突き付ける「刃」とするだけではなく、自らに突き付けられる「刃」として機能するよう「市民との約束」とした(※)。この違いは、民主主義の原理原則を知っている人間と、市長になれば何やってもいいんだと思ってる人間の違いである。自らを律する「信念」を持ちあわせているかいないかの違いである。比べるのは故人に失礼だ。

 つまらん「後継」争いなど、建男さんは酒を飲みながら小ばかにしてるだろう。

※その「刃」を有効に使えていればと思うが、たらればの話はすまい。私はただただ頭を垂れる。

[E:end]

受入れ表明の文面を紹介しようと名護市役所のホームページをのぞいたら、笑ってしまった。わざとかと思えるほど雑なPDFファイルでアップされている。
私の持っているテキストを下記に貼り付けておく。

[E:memo] 

普天間飛行場返還に伴う代替施設(ヘリコプター基地)等の受け入れについて

 私は、市長に就任したときから、普天間基地移設の問題が名護市の重要課題であると考え、この2年間市政運営にあたってまいりました。
 そしていま、この課題に対して最終的な結論を示さなければならない時が来たと思っております。名護市への基地移設を拒否すべきか、容認すべきかということは、私のこれまでの人生で最も困難な選択であります。
 沖縄の米軍基地が、わが国の安全保障のうえで、あるいはアジア及び世界の平和維持のために不可欠であるというのであれば、基地の負担は日本国民が等しく引き受けるべきものであります。
 しかし、どの県もそれをなす意志はなく、またそのための国民的合意は形成されず、米軍基地の国内分散移設の可能性は全くないというのが現状です。
 このような状況で、沖縄県民が基地の移設先を自らの県内に求め、名護市民にその是非が問われていることについて、日本国民はこのことの重大さを十分に認識すべきであると考えるものであります。
 名護市には、すでに広大な米軍基地があり、これ以上の軍事施設の機能強化は許容できないという多くの市民の意見があることも承知しております。
 しかし、沖縄における基地問題の長い歴史と諸般の情勢に鑑み、私はこのたびの普天間飛行場の代替施設の受け入れについて、これを容認することを表明致します。
 そのためには、多くの前提条件(別添)が必要であります。
 基本的には、住民生活に著しい影響を及ぼさないことであり、それを保証するものとして日本政府と名護市が、基地の使用協定を締結することであります。
 また、自然環境への影響をできるだけ小さくする施設計画であることも必要な条件です。
 さらに、移設にかかわる地元地域とその周辺地域及び北部地域の振興について、政府と県が責任を持って支援していくことであります。
 このような前提が、確実に実施されるための明確で具体的な方策が明らかにされなければ、私は移設容認を撤回するものであることを市民の皆様にお約束し、容認の意志を表明するものであります。

 平成11年12月27日 名護市長 岸本 建男

[E:memo]

【別添】
 普天間飛行場返還に伴う代替施設(ヘリコプター基地)等の受け入れのための基本条件

1 安全性の確保

(1)基本計画(設置場所を含む)の策定
  当該施設及び関連施設の基本計画策定に当たっては、市民生活に著しい影響を与えない施設計画を策定するとともに、位置の選定に当たっては、地元住民の意向を尊重する。また、航空機騒音や航空機の運用に伴う事故防止等生活環境や安全性、自然環境への影響等については、国において、客観的な判断ができる適切な協議機関等を設置する

(2)機能及び規模
  SACO最終報告における普天間飛行場代替施設及び民間空港の機能及び規模については、安全性や自然環境などに配慮した最小限のものとする

(3)実施体制の確立
  当該施設及び関連施設の基本計画の策定及び建設については、国、沖縄県及び名護市との間で適切な協議機関等を設置する

2 自然環境への配慮
(1)環境影響評価を実施するとともに、その影響を最小限に止め適切な対策を講じる
(2)必要に応じて新たな代替環境を醸成する。そのために必要な研究機関等を設置する

3 既存の米軍施設等の改善
(1)キャンプ・シュワブ内の廃弾処理については、市民生活への影響に配慮し、その対策を講じる
(2)辺野古弾薬庫の危険区域内に国道329号が現存することについては、その安全対策を講じる
(3)キャンプ・シュワブ内の兵站地区に現存するヘリポートは、普天間飛行場代替施設運用開始時までに同施設へ移設する

4 日米地位協定の改善及び当該施設の使用期限
(1)日米地位協定については、懸案事項を含め諸課題について改善を行う
(2)当該施設の使用期限については、基地の整理・縮小を求める観点から、15年の使用について具体的な取り組みを行うものとする

5 基地使用協定
(1)基地使用協定については、地域の安全対策及び基地から発生する諸問題の対策等を講じるため、飛行ルート、飛行時間の設定、騒音対策、航空機の夜間飛行及び夜間飛行訓練、廃弾処理等既存施設・区域の使用に関する対策、その他環境問題、基地内への自治体の立ち入り等地方自治体の意見を反映した内容で、国と名護市との間で協定を締結し、沖縄県が立ち会うものとし、定期的な見直しを行う
(2)移設先及び周辺地域の住民生活に著しい影響を及ぼさないよう、国、沖縄県及び名護市で必要な協議をするため、適切な協議機関等を設置する
(3)環境問題については、定期的にチェックし調査結果を報告する

[E:mist]