みやぎブログ

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基地建設ロードマップの誤謬(04.6.7メモ)

相方に貸していてノートが壊れた。OSを再インストールしようとするが、外付けのCD/DVDプレーヤーを認識してくれない。もうしばらく試行錯誤してみる。
一応、My Documentsやデスクトップなどのバックアップはとれたので、最悪は免れた。
懐かしい、テキストが多々出てきたので、新基地建設問題に関わることなどをここに置いておく。

おそらく、どこにも発表していない、私の個人メモだと思うが、2004年6月7日の日付がある。

[E:hairsalon]

04.6.7メモ

 

基地建設ロードマップの誤謬

政府が市民投票から学んだこと、学びきれなかったこと

 

宮城康博

 

【論旨】

事業者である那覇防衛施設局も、同意を出した沖縄県も、地元である名護市も、行政側は誰一人解決策を見出しきれずに、辺野古沿岸域へのボーリング調査は市民・住民の座り込みにより阻止され続けている。何が起こっているのかを考えてみたい。

 

九七年の市民投票は、政府対市民(住民)という図式の中で政府が敗北した。しかし、自民党野中広務幹事長代理(当時)は「勝利といってよい」と言い放ち、敗北した条件付賛成派にマスコミ取材陣の前でバンザイまでさせた。この時点で、敗北の結果から政府側は学んだ。条件さえ付かなかったら絶対多数が反対である状況で、条件付賛成派は勝利こそしなかったが確実に票を獲得している。「一票でも勝ちは勝ち」と勝利を確信し豪語していた名護市民である条件付賛成派は敗北感に打ちひしがれたであろうが、野中氏の「勝利といってよい」というのは大いなる励ましであり、その先の現実を見据えていたといえる。政府が前面に出て基地建設を争点にしなければ、行政的な課題が絡み合う首長選挙なら勝てる可能性はある。以後、名護市と県の首長選挙では、政府が前面に出ることなく湯水の如く資金を投与し、政府と協調関係を保てる首長を誕生させることに全精力を傾注される。しかし政府との協調関係はあからさまではいけない。「条件」という形で、沖縄側の主張を組み込んでいなければ、九七年の市民投票時のように政府対沖縄という図式になる。かくして、一五年使用期限、基地使用協定という条件が掲げられる。そうして、地元の首長を参画させる建設推進体制が出来上がり今日まできた。

 

現在、起こっている事態は、この流れの中で進めていける性質のことではない。明らかに九七年以来の体制に大いなる裂け目が口をあけている。那覇防衛施設局は、「作業計画」について名護市や市議会・区行政委員らへの説明会は行なっているが、「環境配慮事項」に関する説明は一切行なっていないのは明白な事実である。行政的な手続きは済ましているが、説明責任が果たされていないのは火を見るより明らかである。まずは那覇防衛施設局が、市民・住民に説明を行い理解と同意を求める姿勢を示さなければ、出口はどこにもない。もうすぐ栄転するらしい岡崎匠那覇防衛施設局長にはそれをする意思はどこにもない。

沖縄側から(行政手続上の)同意以上の加担を得ることなく那覇防衛施設局が強行すれば、九七年の市民投票以上の事態になることは必至である。

しかしながら、沖縄側行政がこれ以上ボーリング調査に加担することになれば、「マグマ」と県知事が表現する県民意思を覆い隠す役目を担っていた条件はその本質をさらけ出すことになり、九七年の政府対市民(住民)という図式が顕在化することになる。県知事は積極的関与はしないと明言しているが、身動きできないというのが現状である。しかしこのままでは、政府と協調加担してきた首長として無責任の謗りを免れない。基地建設推進の政府と協調する沖縄行政のジレンマである。

現状で、政府対市民・住民という図式を迂回するためには、市民・住民側に政府と協調(ないしは建設推進の立場から陳情)する勢力の登場を画策することが考えられるが、現在の座り込みによる市民・住民側の主張は説明責任を求めるというレベルであり、対立側としては説明責任を求めないというものになり登場すること事態が茶番でしかない。

 

九七年の「敗北」から学んだ政府のロードマップに、この先の道筋が描かれているのかはわからない。このロードマップには明らかな限界がある。首長選挙は確かに勝てるかもしれない。首長たちを基地建設推進にある程度は加担させることができるかもしれない。そのために、名護市内に公民館を造ったり多額の血税を投入したり制度を整備することもした。しかし、日本政府による沖縄への差別的基地維持政策を変えることができない限り、沖縄の現実を生きる人間として守るべきものをもった人々を転向させることはできない。それはイデオロギーではなく、沖縄人の精神の問題である。

一人一人が守るべきものを見失いつつあるようにみえる現代社会において、守るべきものを見据えた市民・住民による座り込みは、このロードマップの書き換えを迫る大きな力であることは間違いない。


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