みやぎブログ

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沖縄防衛局、環境アセス調査に着手

沖縄は久しぶりにとてもよく晴れている。布団を干して洗濯機を三回まわした。我が身も干そうかと居間で日差しのなか寝転がったが、暑いのですぐやめた。
今日はヘリも固定翼機も飛んでいないのだろう、この部屋からは、道路工事の音と子どもたちの遊ぶ声しか聴こえない。
なんでこんな日に、こんな記事を書かなければならないのかと思いもするが、ノートしておかなければならないだろう。

New今日、日本政府と沖縄県は、新基地建設に向けて環境アセス手続きを前進させた。「環境影響評価法」に違反しているという批判を浴びながら。

きょう調査に着手/普天間アセスで防衛省(本日の沖縄タイムス朝刊)

普天間アセスきょう着手 方法書確定版、防衛局が提出(同琉球新報朝刊)

あまりにもの御無理を引き摺りながらの政府のスクラム攻撃に対して、沖縄県まで加担しているものだから、スケジュールが垂れ流されるメディアの報道だけをみていると、なにがなんだかの気持ちになって暗澹とする。

防衛局から出された追加方法書に対する知事意見が出されたことについては、「沖縄で現在進行形の矛盾」(2008.02.29)というエントリーで触れたが、その知事意見を受けて、さらに書き直した方法書を防衛局は昨日(14日)午後、県庁を訪れ、県環境政策課の担当者に手渡した。政府も県も、行政はこれで方法書確定として、事業者である防衛局は調査に着手する予定だ。

■これは「方法書」をやりなおすべき事例である

法令に則って公告縦覧された「方法書」のあまりもの事業内容等の不確かさに、沖縄県の環境影響評価審査会は、事業者を審議の場に呼び出し説明と資料の提出を求めた。そうすると、「方法書」の事業内容では示されていなかった内容詳細が大量に出てきた。それが「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価方法書に対する追加・修正資料」として、沖縄防衛局のサイトでも公開されている。

上記の図で示されている、洗機場や進入灯など最初の「方法書」には何一つ示されていなかった。陸域の上空を飛ぶことや埋め立て土砂に沖縄近海から12年分に相当する砂の採取を行ない調達することも新たに示された。この時点で、もうすでに軽微ではない事業の変更としかいえず、「方法書」手続きの最初に戻るべきである。

環境影響評価法では調査の方法等を絞り込んでいくために、広く意見を募る《スコーピング》という手続きを行なう。スコーピングにおける公開性が、公平・公正さと科学的確度を保障する。地元の意見に限定されることなく「環境の保全の見地からの意見」が寄せられ考慮されることを担保しなければ、環境影響評価は根底から著しく信頼性を欠くものになり、事業者にとっても不利な結果になる。

県知事は手続きのやり直しではなく、「書き直し」を求める知事意見を事業者に行なった。これについても市民団体や専門家から手厳しく批判されているが、沖縄県は納得できる理屈もないまま押し通してきた。沖縄防衛局から2月5日に出てきた追加・修正資料について、あらためて県の意見を事業者に出し、それを受けて、沖縄防衛局は修正した「方法書」を14日に沖縄県へ提出しサイトでも公開し、本日から調査に着手した。本事業の環境影響評価は、この一点ですでに信頼性を著しく欠いており、膨大な予算の無駄をすることになる。ボーリング調査で請負業者に支払った予算外支出(22億近く)といい、防衛省という役所には税金を使って行なっているという意識は乏しく、国民や反対派と攻防しているという妄想で凝り固まっているのではないだろうか。

「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価方法書に対する追加・修正資料(修正版)」(沖縄防衛局)

■沖縄防衛局と沖縄県の行政としての立ち回り方

行政としては、環境影響評価法及び沖縄県の条例に則り「方法書」手続きをやり直しているわけではないので、昨年12月21日の知事意見提出以降は法令に則る事業者と地方公共団体の行為ではない。

2月5日に出された事業者(沖縄防衛局)の追加・修正資料は、沖縄県知事宛になっているが、沖縄県から事業者への意見は 「沖縄県文化環境部長」発信で、 「沖縄防衛局調達部長 殿」宛てになっている。沖縄県と沖縄防衛局の言い分としては、法令に則るやりとりは、昨年12月21日の事業者への「知事意見」で終わっており、それから以降のやりとりは、事業者と沖縄県サービス残業みたいなものなんだろう。

事業者である沖縄防衛局が公表している資料は、2月5日提出版が「環境影響評価方法書に対する追加・修正資料」であり、報道では方法書確定版などと呼称されているが昨日(3月14日)県に提出・公表された資料はその「修正版」でしかない。
今年に入ってやりとりされているのは「方法書」ではなく、方法書に対する「追加・修正資料」であり、その「修正版」でしかない。それらの資料の中で、沖縄防衛局は昨年の「知事意見」と今年になって県から出てきた意見を「県意見」と区分して表記している。

行政としては「サービス残業」のような位置づけをずらすと、「方法書」手続きを最初からやらなければならなくなるので、法律(環境影響評価法第28条)違反の疑義を指摘されても無視して無理に無理を重ね、ここまで来ている。

沖縄県と沖縄防衛局の担当職員の中には、誠実に仕事をしている方々もいるだろうが、しかしこのようなやりかたでは、どんなに論を重ねても、批判の誹りを免れない。イデオロギー等により反対する立場からの意見だけではなく、科学的知見をもってする意見からも手厳しい批判を受けることになる。決して、事業者にとってもいい結果をもたらさない。お役所仕事というには、あまりにもお粗末な、無理を通して道理を引っ込めるような手法は、慎むべきだ。

沖縄では、新基地建設に関わって、法治主義を否定するかのような行政の危険極まりない行為が続いている。環境調査名目で、大砲まで有す海上自衛隊掃海母艦「ぶんご」が投入されたことを私たちは忘れない。酷いのは、沖縄県名護市という地方公共団体までがこれらの動向に加担していることである。

■どう考えても理解できない新基地建設

私は、もう何度も言及しているのでここで詳細は書かないが、地位協定三条で排他独占的に管理・運用権を米軍が有している基地に対して、沖縄防衛局が事業主体として環境アセスを行ない環境影響を予測・評価することは不可能だと思っている。何をどう飛ばすかも、すべて米軍の裁量であるのに、どうしてその裁量権のない沖縄防衛局が環境影響を予測・評価できるのか、子どもが考えてもわかる理屈だ。

そんなふうに考えているものだから、事態がどう推移しようが茶番劇だとしか思えない。管理・運用権を有す米軍が事業主体としてアセスに参画するなら話は別だが、それは条約上の問題や主権に関わる問題があり単純にはいかないだろう。

いずれにしても、このようなアクロバットを演じてまで、なにゆえに沖縄の貴重な自然(シュワブ沿岸域の自然度の高さは、基地であったがゆえに復帰後の開発ラッシュから免れた重要な貴重さがある)を破壊してまでグアムへ大量移転する海兵隊のために巨大航空基地を造ってあげなければならないのか。どう考えても理解ができない。

無理を押し通すために「振興策」漬けになっている名護市政のデタラメさも、目に余るものがある。名護市の将来のためにも、このような状況から早く脱する必要がある。議会に8年もいさせてもらって、財政や様々な問題点について知っているのに、それを活用し状況を変えることができなかった。力足らずで、十年前の市民投票をともに実現した市民にほんとうにすまないと思っている。

ブログ書いて憂さを晴らすだけでなく、リアルな活動につなげていかなければならない。ということで、なごなぐ雑記では、名護市の友人・知人の協力も得ながら、意識して名護市政の問題点を検証していくエントリーを増やそうと思っている。興味のない人には、ぜんぜん興味のないエントリーが増えるかもしれないが、勘弁してくださいね。できるだけ、興味をもってもらえるように、問題意識を地域に閉じ込めないでノートしていく努力はします。