みやぎブログ

演劇・戯れ・政治

“板子一枚下は地獄”で生きる生活者を殺す国の盾(追記あり)

いくつかの認識のギャップについておことわりしたうえで、書かなければならない。

私の知っている名護漁協における「漁民」は、水揚げ高など厳密に規定を当てはめれば漁協の組合員の資格などない「漁民」が大勢いる。基地建設予定地になっている辺野古などで、漁港に船を置きまともに漁をしている「漁民」の方は数えるほどしかいない。あとは補償金目当ての漁などしないが漁協組合員という方々だ。
名護漁協の組合長が、「漁民」でもなんでもない辺野古在住の、元名護市幹部職員でバリバリの基地建設賛成派で性格の荒いおっさんだという事実が、すべてを物語っている。

陸の軍用地主で不労所得を得て頽落した人々にあこがれる、海の頽落者たちとは違う真の「漁民」の方々が、我が国の軍艦に殺されていく現実に対して、私はとても複雑な思いでニュースに接していた。

漁協に捜索を打ち切ることをお願いした家族の方々の思いは如何ばかりか。
それを受けて打ち切った漁協や漁民の方々の思いは如何ばかりか。
私は、深く言葉を呑み込み。ただただ、測り知れない思いのまえに立ち尽くしていた。

9しかし、自動操舵で漁船がたくさん航行している海域に突っ込んでいくイージス艦はなにものなんだ。

操業海域に向かって、諸々の準備や様々な事柄に忙しく身を動かしながら航行している漁船のほうが、「避けるものだと思った」などという精神は、ウッカリや怠惰などで済ませる話ではない。イージス艦(イージスというのは“盾”という意味らしい)が守るとしているものが、日々の暮らしに精一杯向き合っている国民ではないということを如実に示している。

東京下町出身の友人からメールをもらった。友人は書く。

「あんな所を自動操舵で通ろうとすること自体、無茶だってことはシロートでもわかる。」

それも夜明け前の、大きくもない漁船が操業に向けて準備をしつつ漁場に、漁港に向かう最中である。

例えて言えば、長距離トラックや乗用車が行き交う東名高速を、大型の装甲車が自動操縦で突っ込んでいく。料金所付近で減速しだしているところに、前の車がよけるのが当然と考えていること。

渋谷駅前のスクランブル交差点で、歩行者が行き交っているところに大型車両が突っ込んで、歩行者が当然避けるものを思っていたってこと。

近所の小さな商店街で一生懸命商いのために軽トラで商品を運んでいたら、大型スーパーの専用コンテナ車が突っ込み轢き殺しといて、当然軽トラが避けると思ったって言ってのけること。コンテナ車ではなく、警察の装甲トラックが自動操縦で突っ込んで、民間人の軽トラは当然避けると思っていたってこと。

私は、十年以上も名護市で基地建設問題に向き合い続けてきたものだから、補償金目当ての「漁民」を名乗る方々をたくさん見過ぎた。そうではないほんとうに、“板子一枚下は地獄”の世界で生きている人々が犠牲になった。このことを重大な問題として心に留め置きたい。もちろん、誰も犠牲になっていいはずがない。しかし、海の上でリスクを自ら背負いながら生きて生業を成している人たちだということがあまりにも痛ましい。家族や同じ漁民仲間の方々の哀しみと憤りは私には想像できるものではないだろう。ただただその深さを前に言葉がでない。

吉清治夫さん、哲大さん親子が、生きていることを祈る。

そして、これから事件の捜査は進んでいくんだろう。あらゆる真実が明らかになり、まっとうな罪と罰イージス艦の関係者に下されることを注視したい。

防衛大臣の責任は重大だが、いますぐ辞職を求める云々で政治的にためにする動きは、バカバカしいとしか思えない。なにはともあれ艦長責任も含めて、すべての事実を明らかにした上で、防衛省自衛隊の関係者はすべてそれ相応の責任追及をされるべきである。防衛大臣の首は明らかにその過程で切らなければならない。石破大臣の早晩の辞任は自明のことである。

Tky200802250503 【追記】-------------

防衛相「12分前」当夜把握 公表は翌日夕 海自艦事故
朝日新聞2008年02月26日03時21分)

自衛隊は漁船に気付いたのが「12分前」である事実を「2分前」と報告し、大臣がそれを受けて自民党部会で「2分前」と説明。

「実際は12分前」と報告があった後も、自衛隊の記者会見では「2分前」と発表し続ける。

自民党部会で石破大臣が行なった報告が、修正され改めて報告されるまで、国民にはウソを報告していて構わないという自衛隊の対応は大問題。「情報隠蔽があれば辞任」と言及していた石破氏は今日にでも、自衛隊幹部を引き連れて辞めるべきだ。

自民党自衛隊…この国はクラッシュしているんではないか。

【追記2】11:45

石破防衛相、辞任を否定朝日新聞2008年02月26日11時42分)

20080226at06b_2 石破大臣は、行方不明者の親族から「絶対辞めるな。原因究明をしろ」と言われたと発言しているが、こんな隠蔽工作を組織ぐるみで やっている役所のトップが、開き直るにも限界がある。町村官房長官も「どなたが問題にしているのか。防衛省改革…」などとのたまっておられる。
問題は、大臣が自民党部会に誤った報告をし、その自民党部会で訂正されるまでの間は、
錯誤と知りながら記者会見で同じ報告をし続けていたこと。自民党は何様だ。自民党と政府と自衛隊が、グルで隠蔽工作をしようとしていた可能性すらある。それができないとわかって、開き直って「12分前」を明らかにしたのではないかと疑われてもしょうがない。
町村官房長官は石破大臣を擁護しているのではない。自民党・政府・自衛隊の現在の構造を擁護している。防衛省改革云々を口にすること自体が、恥ずかしいほどのことが発覚していることを知るべきである。野党のみならず、国民を完全に馬鹿にしている。

----------【追記】ココマデ

自動操舵でイージス艦があの海域に突っ込んで行ったことは、もっともっと問題にされて然るべきだ。

“板子一枚下は地獄”のような現実世界を、地を這うように生きている人々がたくさんいる。そのことに意識が及ばない政治など政治ではない。この国の政治は狂っている。こんな“盾”などいらない。

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【参照】

海自OBら「艦長らの判断、お粗末」 イージス艦事故
(朝日新聞2008年02月25日07時40分)

イージス艦事故受け、混雑海域は手動操舵…統一基準策定へ
(読売新聞2008年2月25日03時08分)

イージス艦事故:地元漁協、不明の2人の捜索打ち切り
毎日新聞2008年2月25日 11時06分)