宮城康博blog

沖縄・自治・徒然…Ten Thousand Light-Years from Home

続・沖縄から岩国への手紙

Suou 岩国市民のみなさん。

古い話からで恐縮ですが、いまから十年前の、沖縄県名護市での住民投票のときに、基地建設の見返りに日本国政府により6,380億円もの振興策、毎年30億円もの基地交付金名護市に入ってくるとまことしやかに宣伝されました。しかしそれは、なんの根拠もない悪質なデマでした。

普段は街の名士のような会社の経営者の方々や市会議員の方々が、温厚で人望も厚い創価学会らしいけど人のいいおばちゃんたちが、政府の後ろ盾も得てそのようにおっしゃっているので、あやうくみんなが信じるところでした。そんなことが米軍基地に関係するときにはいつもいつも出てくるものです。ウソでもいいから、そのような話をしないと、ワリにあわない、誰も受け入れないものを押し付けているということでしょうね。

結局、市民投票では「反対」が多数になりました。しかし、そのあとの市長選挙で基地建設を受け入れる市長を名護市民は誕生させてしまいました。

岩国市民のみなさんに、名護市の経験をお話しますので、どうか参考にしていただきたいと思います。

基地建設を受け入れることで、名護市は政府からたくさんの振興策の補助を受けています。それで市の財政はどうなったでしょうか。潤ったのでしょうか。国から手厚く特別のカネが入ってくるんだから、財政健全化が図られて借金も減ったと思われるでしょうか。

実態は、その逆です。

Sinario20060627 名護市は借金が増え続け、大変な思いをしました。右の図では将来的には減る予想をしていますが、現在でも増加の傾向をたどっています。

なぜ、こんなことになるんでしょう。不思議ですね。

振興策やSACO交付金や米軍再編交付金にしても、借金返すために使っていいよと渡されるオカネではありません。

それはなんらかの事業をするための予算です。建物を建てたり、公園をつくったり道路をつくったりの事業です。必要不可欠な公共事業をするのに、有利な制度を利用することは、私はいいことだと思いますし、市民みんなのためのお金を無駄に使わないためにもそうすべきでしょう。

しかし、そのような交付金を得て事業をすると、自ずと借金が膨れ上がっていく構造になっています。8割を国からの補助で行なっても、あとの2割は負担しなければなりません。なかには9割を国が補助し、あと1割は借金だけでまかない、それは後に交付税措置するから10割補助などという制度もあります。名護市などはその制度をつかいたくさん建設事業を行いました。「それならバッチリじゃないか、1割は交付税措置とかで国が戻してくれるんだろう」と思われるかもしれませんが、交付税措置というのは、地方交付税を算定するときに必要なお金として上乗せするからねという措置ですが、交付税は増えません。「三位一体改革」というものを聞いたことがあるでしょう。あのカイカクで、地方交付税は総額が縮小し続けているので、どうしても減るのです。名護市地方交付税も減り続けています。交付税措置されるから無いも同然のはずの借金は現実的には積みあがり増え続けています。「三位一体改革」の実態は、残念ながら政府による国家財政再建のための地方切捨て政策でしかなかったようです。

お話が細かくてごめんなさいね。大事なことなので、話を続けます。

公共工事などを「普通建設事業」といいますけど、名護市の普通建設事業費は、2004年度は99億8000万円で、歳入の35%を占めていました。
市民1人当たりの普通建設事業費は例年15万―20万円と沖縄県内最大規模で、2002年度は21万円で1位になりました。名護市は明らかに土建市政です。
政府からの高率補助で公共工事をやりつづけて、高率補助でも先ほども言ったように、市の負担は必ず発生します。どうしても将来の市民負担・借金が増える構造になっているのです。

名護市の市債残高(借金)は二〇〇三年度で二百三十七億円となり、十年間で八十億円以上増えました。財政の弾力性を示す経常収支比率も適正範囲を大幅に超える95%に達しました。現在では98%をウロチョロし、市民のために自由に使えるお金は2%前後しかない状態になっています。

Sinario20060710 これだけ無理をして、年間百億円近くの振興事業予算が周辺地域も含めて入っているのだから、街全体は活気付いて活性化になっているんだろうと思われますか。

そんなことはありません。

十年前の住民投票のときにも、それから以降の市長選挙のときにも、いつもいつも話題になり、その活性化が叫ばれる旧市街地があります。岩国の錦帯橋ほどではありませんが、近くに“ひんぷんガジュマル”という大きなガジュマルの木があり、名護市のシンボルのような十字路になっています。しかしかつての面影はなく、現在は空き店舗だらけで、いわゆるシャッター通りといわれています。基地建設を受け入れようという運動をなさっていた商工会や土建関係のみなさんは「十字路を守ろう」などと標語にして、活性化を希求するキャッチフレーズにしていたほどでした。
名護市では住民投票の結果を裏切り、基地を受け入れ、十年間で数千億円の振興予算が注ぎ込まれても、活性化は起こりませんでした。

名護市十字路商店街の空き店舗率は、2002年度には14.40%でしたが、2005年度には21.77%と増加し続けており、その傾向に歯止めはありません。

政府からの高率補助に頼り、自らの知恵と工夫で、地域を良くしていこうという精神を失うことでの弊害のほうが大きいと言わざる得ない状況が続いています。
基地建設に伴う振興策で公共工事がたくさん入って喜んでいるはずの土建屋さんたちも、大手ゼネコンに事業をとられ孫請け曾孫請けに甘んじて、資金繰りがうまくいかず倒産も多数出ているのが現状です。農家の破綻とあわせて社会問題になりつつあります。沖縄はクラッシュしている最中なのかもしれません。

結論的にいえることは、政府の高率補助に頼って、まちづくりをしていこうなどと思っても、まちづくりはできない。大事なのは、その街で生きていく人たちが、心と力をあわせて、自分たちで街をよくしていこうと努力することでしかない。入れ物だけつくっても、そこに入れる中身がスカスカだったら、意味はありません。まちづくりはひとづくりでしかないでしょう。

10年間も基地建設問題に翻弄され続けている沖縄・名護市をみつめて、現実と客観的数値を前にして思うことは、政府からの迷惑施設見返りの制度や資金は麻薬のようなもので、それに頼るとまちが廃人化する危険性があるということです。

岩国市民のみなさん、岩国を愛し、岩国を守るためだったら、どんなに強大な力にでも立ち向かい、正々堂々と主張し、話し合っていく姿勢を持ったリーダーを、みなさんはすでに持っているじゃないですか。

合併してあたらしい岩国市になり、これから一歩一歩、岩国市をともにつくりだしていく市民を信じて、どうぞ日本の地方自治を守った岩国市として歴史に名を残してください。そうして、激烈な騒音が日常茶飯になることはない、岩国の生活空間を守り抜いてください。それができるのはみなさんだけです。

一昨日のなごなぐ雑記にも書きましたが、内閣官房長官は滑走路沖合移転で騒音が軽減されると言っていますが、防衛省山口県は騒音が増大する地区が出ることでの行政的な手続きに入っています。事実をしっかりと見すえて、岩国市民のみなさんが賢明な判断をなされることを祈ります。

【参考】
市政報告井原勝介ホームページ)
マニフェスト福田良彦公式ホームページ)←タイトルバーのマークは市民党?