宮城康博blog

沖縄・自治・徒然…Ten Thousand Light-Years from Home

岩国についてのメモ(3)

Saihen_tizu2大急ぎで岩国の新市庁舎建設問題と厚木基地からの艦載機移転問題(米軍再編)を概観した。この2・3年だけでなく、長期的にみなければならないし、その地で長く生きている人たちの思いや動向も絡み合い、おいそれとこうであるという結論めいたことはいえない。

しかし、岩国現地でサジェッションを得て普天間飛行場を抱える宜野湾市伊波洋一市長が着目しているAICUZ(Air Installations Compatible Use Zones=航空基地適合使用区域)という米国防総省と米軍が軍事飛行場を抱える自治体との間で運用している土地利用計画指針に基づいて、米軍が岩国基地で調査を入れていたことがわかった。
それらを考慮に入れて、仮説をたてることはできる。

《米軍は岩国基地NLPを含む空母艦載機運用をすべく長期的に検討を重ね、米軍再編で一気に動き出した。無策の日本政府は、それに付き従い今日の状態をつくりだしている》

岩国基地の沖合展開

岩国基地の沖合展開のきっかけは、1968年に九州大学に戦闘機が落ちたことに遡る。同機種が岩国基地に配備されており、最悪の事態を回避したい地元の人々の強い要望を受けて、20数年後の1992年に滑走路の沖合移動が決定する。97年に事業が着手され、来年(2008)に完成する予定である。
沖合移動のための埋立土砂は市内の愛宕山を削り取り調達した。愛宕山の跡地には、山口県と岩国市による住宅建設開発計画があるが、需要計画は二転三転し、現在では山口県は政府に土地を売却し米軍住宅建設に供するつもりである。空母艦載機移転に反対している岩国市は、もちろん米軍住宅建設に反対しているが、広大な土地と数十億円にも上る大きな開発費を抱えており、現実的にはかなり厳しい状況である。

■米軍の動向

Apzsh2 米軍には、基地周辺の騒音被害の低減と訓練活動の両立を図るために、住宅や学校・病院といった公的施設や、商業・産業施設などの立地を制限するため、危険区域などをゾーニングするAICUZがある。(画像はAICUZにおける危険区域の概念)
そのAICUZを岩国基地に適用した調査を、米軍は“Harris Miller Miller & Hanson”という音響等の専門コンサルティング会社に委託している。1993年である。それらの結果詳細はむろん明らかにされていないが、日本政府(防衛省・外務省)はそんなことがなされたことも知らないか知っていても隠している。地位協定上は、提供施設の管理・運用・警護のために米軍は排他独占的な権利を有しているのだから、いちいち日本政府に報告する義務もいわれもないのだろうが。Iwakuniokiai
いずれにしても、日本政府が岩国基地の沖合移動を決定した翌年に、米軍はAICUZを入れて岩国基地周辺を調査した。
沖合移動でコンビナート群が滑走路延長線上から外れ、AICUZにおける危険区域は回避されるのかもしれない。
米軍はNLP(Night Landing Practice=夜間離発着訓練)を岩国基地で実施したい旨を米軍再編協議で日本政府に伝えていることが報道されている。

■新市庁舎補助金の目的は

岩国市は97年から2001年までに10億円のSACO特別交付金を受けている。新市庁舎への補助金井原市長や市当局が公にしている「KC130受け入れに伴う見返り」というのはにわかには信じ難い。新聞報道等では02年に岩国市がハワイからの移駐を受け入れたCH53D大型輸送ヘリ(沖縄国際大学に墜落したの同型機)8機の見返りであり、井原市長と防衛施設庁は「覚書」を交わしているはずだというものもある。防衛省はその存在を否定し、市長は「協議の中ではメモや覚書を作るので、そういう意味での紙や文書はあるかもしれない」(朝日新聞07.2.23)と含みを持たせている。
いずれにしても、米国政府から要請を受けてCH53の受入先を探して焦っていた政府と、地震による被害で市庁舎建設不可避という窮状にあった両者それぞれの事情があろう。
しかし、岩国市に不幸だったのは市庁舎建設に一番予算のかかる年度に、米軍再編の閣議決定が交錯したことである。
しかし、政府があまりにも情けなく信頼できないのは、日米合意を勝手に変更してそれに従わせるために、継続事業に対する補助を恣意的に止めることである。

Aicuzmap ■AICUZからみえる日本の位置

米本国には政府からの独立委員会で大統領へ勧告する権限を有する「基地閉鎖・再編委員会」(Defence Base Closure and Realignment Commission=BRAC)がある。
全米でも屈指の海軍航空基地であるヴァージニア州のオシアナ基地は、2005年にAICUZに基づいて判断したBRACの勧告に従い、自治体が対策を講じたが不適格と判断された。BRACはフロリダ州などいくつかの移転候補地を示した。
同年8月に、オシアナ基地誘致をフロリダ州のブッシュ知事(大統領の弟)が表明するが、住民に反対の声が多いという理由で当該自治体の市長が同年10月に誘致表明を撤回。しかし、どうしても誘致したい住民たちが提起し住民投票が2006年11月に行なわれ、反対が60%をしめた。2007年1月にBRACはフロリダ州も不適格と判断し、フロリダ州への移転は頓挫する。現在でもオシアナ基地周辺では州や市がAICUZに適合した対策を講じるよう努力しているが、最終的には閉鎖・移転されるだろうといわれている。(画像はオシアナ基地周辺のAICUZにおける騒音コンター)

米国では空母艦載機等が配属される航空基地は、周辺が市街化する中で厳しく制限を受けることになっている。その基準がAICUZであり、基地はその基準に適合しなければ閉鎖される。翻って日本国では、米軍はやりたい放題の訓練と運用を行い、日本国政府はそれを追認するだけである。

日米安保」の是非という神学論争とは別に、このあまりにも酷い《国民軽視米国追随》の実態をどうにかしなければならない。白紙委任で受け入れ状態の名護市と違い、民意を守り抵抗している岩国市の踏ん張りの重要さは、筆舌に尽くしがたい。

オシアナ基地の近くにNLPを行なう補助飛行場がある。騒音緩和のために海軍は2000年に移転計画を発表し、複数候補地で環境アセスメントを行い、2003年にノースカロライナ州のワシントン郡が適地とアセス最終報告を出した。04年に環境団体がアセスの不十分さを提訴し、05年には原告の言い分を認める判決が出て、海軍は追加の環境アセスを行い今年2月に報告を出した。その報告に対して海軍は恣意的なアセスを行っているとの批判が大きく今年5月に下院は海軍の同計画の予算を凍結する法案を可決した。

環境アセスメントは合意形成のための情報共有手段である。その入り口ででたらめな「方法書」を提出して恥じない政府(私は名護市への新基地建設に係る「方法書」を念頭においている)は国民との合意形成など考えてないとしかいえない。

これらの動向からうかがえる日米の違いをなんと表現したらいい。属国、隷属、…いずれにしても日本国政府のありかたはまともな主権国家の行為ではない。フロリダでの「住民投票」でオシアナ基地移設が頓挫したことを考えれば、名護市民投票、岩国の住民投票(市長は民意を守ろうとしているが政府は一顧だにしていない)がどのように扱われているのかは凍えそうに寒い。国民は主権者でなく民主国家ですらない。

■米軍再編は自治のありかた国のありかたの根幹を問う

こんな見出しを置くと、「守ってもらっている」とか「国防は国の専権事項」とか「地方のエゴ」だとか様々な言葉が垂れ流される。アホらしい議論に付き合う気はないが、隷属的状況の臨界点はどこなのか。もしかしたら底なしなのか。私はこのまったりとした穴倉から出るために出口を探し続ける。
沖縄・岩国、そして座間で何が動いているのか。私たちは知らなければならない。

以上で、「岩国についてのメモ」を終わります。
仕事のためのメモをあまり手を加えないで削ってアップしたので、読者に読んでもらえる記事にはなっていませんでした。すみません。

明日の岩国市議会がどのような結果になるのか、私は最大注目している。

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【資料】

岩国市公式ホームページ

http://www.city.iwakuni.yamaguchi.jp/

【貴重】市議会での容認派議員の議論は研究材料になる。
岩国市議会公式ホームページ
http://www.iwakuni-shigikai.jp/

米空母艦載機の岩国基地への移駐問題について(岩国市基地対策課) →http://www.city.iwakuni.yamaguchi.jp/cgi-bin/odb-get.exe?WIT_template=AC020000&WIT_oid=icityv2::Contents::1223

岩国基地=厚木機能移転問題中国新聞
http://www.chugoku-np.co.jp/iwakuni/index.html

日米同盟:未来のための変革と再編(外務省)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/henkaku_saihen.html

再編実施のための日米のロードマップ(外務省)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/g_aso/ubl_06/2plus2_map.html

岩国基地の沖合移設山口県
http://www.pref.yamaguchi.jp/gyosei/iwakuni/01.htm

【重要】今は亡き防衛施設庁の軌跡がわかる資料
防衛施設庁史目次防衛省自衛隊
http://www.mod.go.jp/j/info/choushi/choushi.html

防衛施設庁史第7章第6節:岩国飛行場滑走路沖合移設工事の開始(同上/PDFファイル)
http://www.mod.go.jp/j/info/choushi/choushi_pdf/01_07_06.pdf

防衛施設庁史第9章第6節:岩国飛行場の民間空港再開に係る日米間の基本的合意(同上/PDFファイル)
http://www.mod.go.jp/j/info/choushi/choushi_pdf/01_09_06.pdf

【重要】宜野湾市が独自に普天間飛行場にAICUZをあてはめて地図におとしている。
普天間飛行場の安全不適格宣言(市長コメント:宜野湾市役所)
http://www.city.ginowan.okinawa.jp/2556/2581/2582/27873.html

【貴重】オシアナ基地のAICUZ情報がわかる。
Naval Air Station Oceana(CNIC)
https://www.cnic.navy.mil/Oceana/index.htm

【重要】岩国基地でAICUZによる調査が行われている。
Aviation Noise Consulting(Harris Miller Miller & Hanson.INC)
http://www.hmmh.com/aviation_usnavy01navy.html

【重要論文】米国での基地問題の事情がよくわかる
米本土における基地機能の移転・再編と地域及び環境への影響―艦載機部隊移転・NLP施設建設計画をめぐる動きから―(レファレンス:国立国会図書館
http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/refer/200710_681/068104.pdf

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