宮城康博blog

沖縄・自治・徒然…Ten Thousand Light-Years from Home

岩国についてのメモ(1)

岩国の問題について、取材してきたり調べた事柄のメモを作成している。ブログの記事を書く余裕も無いので、そのメモをこれから三回に分けて掲載する。
市庁舎建設に係る問題を中心に、05年時点までの動きを(1)、06年から今年9月までの動きを(2)、そして現在と新市庁舎以外の動きを概括して(3)とします。

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01 岩国の市庁舎は、1959年に建設されて既に50年近くを経過している。

市庁舎の整備計画は、1986年3月に行なわれた市議会庁舎等整備特別委員会の中間報告を受けて、岩国市庁舎等整備調査協議会が数回、協議・検討を重ね「第2庁舎建設」の方針が決定され、1993年度から庁舎建設基金の積み立てを実施してきた。

1995年1月の阪神・淡路大震災後に改正された建築基準法に沿って、96年に市庁舎耐震診断を実施した結果、鉄筋、鉄骨の量が小さいこ と等所定の耐震性能に対して大幅な性能不足が指摘される。さらに、震度5に耐え得る構造の安全性を確保するためには柱の鉄板巻き等の改修が必要となり、そ の改修費用はおよそ20億円以上かかると予想された。

市当局は、現庁舎に多額の改修費用をかけた上に、さらに第2庁舎を建設することは経費の面からも好ましくはないと、市庁舎整備に対する基本的な考え方を改め市庁舎から市体育館周辺までを視野に入れながら、来庁者の利便に供するだけの駐車場を確保した「新庁舎建設」の方向に向けて、岩国市庁舎等整備調査協議会で検討を進めてきた。

市議会には2000年に「庁舎等整備特別委員会」が設置され、老朽化した庁舎の建て替えについて調査・議論が重ねられてきた。

その矢先の、2001年3月に発生した芸予地震によって、岩国市庁舎は市内のビルの中で最大の被害を受けた。庁舎の柱や梁など、建物の主要部分に大きな損傷を受け、その後実施した耐震診断の結果でも、耐震性能の低下が明らかとなる。以来、市庁舎の建て替えが住民の安全、そして職員の安全のためにも喫緊の課題となる。

岩国市は、2002年8月に新庁舎建設の基本構想を策定し、人口や職員数の規模から標準床面積及び予算規模を算出し、総事業費を104億円と見積もった。

防衛施設庁からの補助を受けて、2003年度に基本設計、2004年度に実施設計を行なう。2005年度から本格的な新庁舎建設工事に入る。2004年度末時点での庁舎整備基金の積立額は18億6,800万円であった。総事業費104億円に対する、確かな財源は18億円余(※1)である。岩国市は、防衛施設庁と折衝しながら、残りの財源を可能な限り補助金等で得られるよう努め、2005年3月には防衛庁からの新市庁舎建設事業への補助金を49億円と試算する。

岩国市の市議会における説明(2004年12月定例会時の総務部長答弁)によると、補助メニューは「沖縄に関する特別行動委員会の関連の補助事業、いわゆるSACO関連経費での対応」であり、「これは平成9(1997)年に沖縄普天間所属のKC-130航空機ハーキュリーズ岩国基地移駐を容認した際の民生安定施設に対する助成措置の拡充等の要請に対しまして、国において具体的にこたえていただいたもの」であり、「本事業は、要請時におけます自治体の個々の要望を踏まえ、誠意を持って対応するという国の回答に沿ったもの」ということである(※2)。

※1
市当局は近隣の廿日市市の事例も引きながら、それほど法外な事業費ではないと強調するが、市議会において大西明子議員に廿日市市の財源内訳は一般財源が6億4,000万円で85億7,560万円も基金を積み立てていることを指摘されている。岩国市の厳しい財政状況はあるだろうが、市庁舎の老朽化と比して基金積立高をみると、基地あるが故に国の補助等を当てにするあまさがなかったか気になる。

※2
岩国市は1997年から2001年まで、SACO特別交付金を毎年2億円×5年間=10億円を受けており、道路改良事業などを行なっている。市庁舎への補助は、それとは別立ての特別の対応という説明である。そのような対応が、どのようになされているのか、SACO関連事業の予算の使われ方をみなければならない。全国的にSACO事案は完了しておらず現在でも予算執行は行なわれているだろうが、名護市もそうだが、米軍再編でSACO事案の中身が変更された自治体ではSACO交付金等は廃止され再編交付金に替わられている。

49億円という“試算”について、市議会(2005年3月定例会)において井原勝介市長は説明する(引用者が大意を歪めない程度に削除してます)。

49億円のうち3億円については、今予算、17(2005)年度分として計上しているが、他の部分については毎年毎年国から提示されるということになっており、総額は明示していただけないという状況になっている。そういう中で、国の補助に関する考え方、御説明等を聞き、市として見込んだものが49億円程度ということで、現時点において現実的な数字ではないかというふうに見込んだところでございます。 その他の財源としましては約19億円の基金を積み立てておりまして、本来であれば基金をもう少し積んで庁舎の建設に当たるというのが通例です。当初我々ももう少し期間をかけて基金を積んだ上で庁舎の建設にも入ろうかというふうにも思っておりましたが、芸予地震等で耐震性が極端に低下をするということで、やはり早期に建設をしなければいけないということで、国の補助等もお願いをする中で、時期を早めて建設をしていくということになりました。基金については、この程度にとどまっているという状況です。
その他の財源としては、起債を充当するということで建設に当たっていきたい。 先ほど申し上げましたように、補助金等については、今後とも確定してない部分があるわけです。今後とも国の補助金等の確保にも最大限の努力をしながら、耐震性が大変劣っていると、劣化しているという状況の中で、職員、市民の安全を守るためにも、できるだけ早期に庁舎を建設していきたいというふうに考えているところです。

このような状況で、新市庁舎建設事業は2005年度から本格的工事を着手した。
計画では、2005年度に現庁舎に隣接する既設の体育館や立体駐車場等の解体工事を行い、06年と07年に本体工事を完了し、08年度に現庁舎を解体することになっている。

2005年10月29日に発表された在日米軍再編の中間報告(と日本では呼称されているが、それは中間報告などではない『日米合意』である。『最終報告』とされる翌年の日米合意は、この合意を実施するための『ロードマップ』である)において、厚木基地所属の空母艦載機59機が岩国基地に移転されると公表された。

米軍再編に係る日米合意に先立つ同年6月に、井原勝介岩国市長は市議会において市長としての考え方を表明する。以下、議事録から引用 する(引用者が大意を歪めない程度に削除してます)

米軍再編に関する問題についてお答えします。
まず、6月1日に上京しましたが、その間の経緯についてお伝えしたい。 3月28日に国が設けました自治体の意見聴取の場で、二井知事から、これ以上の岩国基地の機能強化については容認できないという趣旨を伝えていただきますとともに、岩国市長私から直接、外務、防衛両大臣に地元の意見をお話したいという要望も伝えていただきました。その後、何の音沙汰もなかったわけでありますが、その間にもさまざまな情報が飛び交う中で、市民の不安も高まっているわけでありまして、私の方から重ねて直接の要望、大臣に対する要望のお願いをしておりましたところ、6月1日にそれが実現いたしまして、桑原議長とともに上京して、両大臣に会見をしたということでございます。
その際に、情報収集とともに、岩国市の次のような考え方について御説明をし、要望をしました。

まず、米軍基地につきましては、国の安全保障上、重要な役割を果たしているという観点から、その存在については岩国市としては受け入れており、これまでも必要な協力もしてきている。これまでもSACOの合意に基づきまして、普天間基地のKC-130空中給油機の受け入れについても容認をしてきましたし、最近では平成14(2002)年には人道支援という観点から、ヘリコプターの受け入れも認めてきているなど、できるだけの協力もしてきております。しかし、今回想定され報道されているような厚木基地やNLPの岩国への移転という案につきましては、岩国基地の性格を根本から変えてしまい、市民生活の安全や安心を根底から破壊するものであり、到底受け入れられない。平成11年から12年に岩国でもNLPが実施され、私も経験をしましたが、そのすさまじい轟音はとても耐えられるものではなく、市民生活と共存できるものではない。

さらに、現在国において事業が進められております基地沖合移設事業は、通常の安全性の確保や騒音の軽減を目的としたものであり、在日米軍の再編の受け皿ではない。厚木基地周辺の自治体も大変であろうが、厚木基地の空母艦載機部隊を岩国に移転させることは、基地負担の転嫁になるだけであり、何の解決にもならない。平成13年にNLP関係5市長会議を大和市で行ったが、その際の共同声明にあるように、従来どおりNLPは硫黄島で実施することが基本であり、最善の方法である。硫黄島が不都合であるというのであれば、離島など市民生活に影響のないところで行うべきである。岩国の経済界にNLPなどの誘致の動きがあるやに伝えられているが、一部の動きであり、多くの市民が反対をしていること。

以上を申し上げまして、地元の実情を御理解の上、報道されているような案が提示されることのないよう適切な対応をお願いしたところでございます。 両大臣からは、日米両国ですべての在日米軍基地を対象としてさまざまなアイデアが検討をされているが、いかなる決定も行われていない。何どき具体的な案を提示できるかどうか未定であるけれども、最終確定する前に必ず地元に提示するなどの回答が行われたところであります。

在日米軍の再編につきましては、現在まで国から具体的な案の提示はありませんが、今後状況に応じて、必要に応じて議会とも十分に御相談し、そして市民にも必要な情報提供も行いながら、あるいは説明も行いながら、議会や市民の声を踏まえて対応していきたいというふうに考えております。

繰り返しになりますが、在日米軍の再編は関係自治体に多大な影響を与える大変重要な問題であります。国においては、本件に関し、関係自治体にしかるべく説明責任を果たすとともに、意向を尊重すべきであるというふうに考えております。

政府からは、10月29日の日米合意確定前に、全国の関係地方自治体に内容の提示はなかった。むろん、岩国市も然りである。
日本政府は、これを「中間報告」と呼び、最終報告までに変更があるかのように装ったが、米国政府関係者からは、「中間報告ではない日米合意」だと誤解を招く表現に不快感が示された。

岩国市議会においては、米軍再編に関する市の対応が新庁舎の補助金に及ぼす影響を懸念する声が高くなる。岩国市は、政府に協力すべきだという議員と政府の強硬な姿勢のあいだで難しい舵取りを迫られる。
2005年9月定例会時の市当局の市議会への説明(総務部長答弁)をみる。

「(市庁舎建設の)補助金については、防衛の補助金をいただくと、SACO関連でいただくことになっております。これにつきましては、国の計算の仕方等を参考にいたしまして、市の方で算定をいたしたものでございます。 ただ、これは3年の債務負担を計上いたしておりますが、国の方といたしましては、何度も申し上げますが、これにつきましては法律的な債務負担行為に対する法的な裏づけがないということでありますので、これは我々としては国のそういった指導によって計上したことであるから、まず間違いないというふうに確信(※3)をいたしております。
それから、地方債につきましては、合併が来年(2006)の3月20日でございます。有利な起債ということで、これまでも申しておりますが、有利な起債と言えば何かということになるわけでございますが、今、充当率、あるいは交付税の算入率等を勘案いたしますと、合併特例債あたりも視野に入れたもので検討していくということになろうかと思います。
ただ、平成18(2006)年のことでありますので、合併後ということでありますので、今、合併特例債につきましては、いい悪いということは、イエス、ノーということは言えませんが、有利になる起債であれば、合併特例債も視野に入れとるということであります。
それから、この補助金の関係で、米軍の再編云々という問題等でございますが、これは当然別問題の次元、次元が別問題というふうに認識いたしておるところであります」

※3
地方財政法第三条は
地方公共団体は、法令の定めるところに従い、且つ、合理的な基準によりその経費を算定し、これを予算に計上しなければならない」と定める。第二条2項では「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行つてはならない」と定めている。岩国の新市庁舎の「補助金」に係るケースをどのように考えるべきか。

米軍再編の「中間報告」の公表後は、井原勝介市長が最終的には空母艦載機移転を引き受けるのではないかなどの疑心難儀が起こる。
さらに、「中間報告」にSACOで岩国移転が合意されていた普天間飛行場所属のKC-130を、鹿児島県鹿屋市への移転を優先検討するという記述もあり、工事に着手した新庁舎建設の補助金が得られるのかなどの問題も勃発し事態は緊張度を増してくる。

これまでは、米軍基地に対して柔軟に対応してきたが、艦載機移転に関しては「岩国基地の性格を根本から変えてしまい、市民生活の安全や安心を根底から破壊するものであり、到底受け入れられない」とする井原市長と、艦載機移転を受け入れ経済支援策を引き出す条件闘争へと転ずるべきだとする市議会多数派の対立も激化する。 2006年3月12日に住民投票が行なわれ、8日後には近隣の8市町村が合併して新市政・岩国市(それまでの岩国市は廃止)が誕生する。初代市長に、井原勝介(旧岩国市長)が選ばれる。

(続く)

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