みやぎブログ

演劇・戯れ・政治

基地と人魚と振興と

Mermaid 『人魚の棲む海~ジュゴンと生きる沖縄の人々』という番組が放送されるのをすっかり忘れてた。…まっ、我が家はテレビがないので、どうせ観ることはできなかったんだけどね:)

QAB(琉球朝日放送)のウェブサイトで、番組内容をしょうかいしている。Coccoがナレーターに初挑戦しているらしい、番組紹介の動画もあるので興味のある方は観てください。→http://www.qab.co.jp/07mermaid/index.html

きっこさんが、いろんな地域でのオンエアの日時等を調べて掲載しています。ぜひチェックしてみてください。→http://www3.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=338790&log=20071125

先週末には国内外からの参加者により「日本平和大会」(共産党系の約50団体で構成された実行委員会主催)が沖縄で開催されていた。1000人規模でのキャンプ・シュワブでの人間の鎖も行なわれた。拍手♪→http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-29225-storytopic-1.html

凍結されていた「北部振興」の予算がレンジでチンされるらしい。
http://www.okinawatimes.co.jp/day/200711251300_03.html
その話題について、少し考えたことを《続き》でメモしておきます。

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北部振興事業とは

「北部振興」事業は、1999年の閣議決定で2000年度から100億円×10年=1000億円の予定で進められていた。100億円の内訳は概ね公共事業の前倒し部分50億+非公共事業50億である。名護市だけでなく、北部12市町村すべてが対称だが、「北部振興」事業費の中に「受入先周辺自治体振興」の予算が包含されているため、名護市が主体になる事業が多くなっている。

名護市における非公共事業名護市全域が指定されている「情報通信金特区」の企業誘致を目的としたハコモノ建設などに充てられている。週刊誌等で末松文信名護市副市長が関与する官製談合が問題にされていたが、その建物「産業支援センター」も北部振興事業で建造された。

いろいろ問題だらけの「北部振興」事業だが、昨年の「米軍再編」に係る閣議決定で1999年の閣議決定が廃止されたことで、成立根拠を失っていた。

おあずけされる飴

政府は、新基地建設を進捗させるための「アメとムチ」のアメとして同事業を利用しているが、名護市がV字形滑走路で基本合意したにも関わらず、滑走路の沖合移動を要求しているため、今年度予算に計上されている「北部振興」事業費100億円の執行を凍結していた。

「北部振興」は上述したように、99年の閣議決定という成立根拠を失っているので、来年度予算に事業費が計上されなければ、「北部振興」事業そのものは消滅する。名護市および北部の自治体は内心焦りまくっているはず。

12月に開催予定の移設措置協議会で、沖縄側が何らかの妥協や合意を示すか、政府が折れるのか、沖縄の地元自治体と政府防衛省はギリギリのところで闘いを展開している。名護市長沖縄県知事も、沖縄にいるときは威勢はいいのだが、東京に行くとヨダレを垂らしている植民地の現地協力首長だから、「ギリギリのところで闘い」といってもたかがしれているけどね。

その着地点がみえたら、凍結している予算をレンジでチンしていいよ、ということで折衝中という報道が地元の両紙(沖縄タイムス琉球新報)に掲載されている。こういう報道にどんな意味があるかわからないが、なんらかの観測気球であったり様子見なんだろうね。

関係首長等がなんと言っているか、報道記事(青字はタイムス・赤字は新報)から引用しておく。

島袋吉和名護市長
「政府から連絡がないのでコメントはできない」
「北部各市町村はそれぞれ事業を計画しており、早めに予算執行してほしいというのは以前から申し上げている通りだ」

上原康作北部振興会会長(国頭村長)
「政府が継続を決めたのなら大変喜ばしい。当初は十年間の予定だった北部振興策。いろいろ利害関係はあるが、まずは信頼関係を築かなければならない。これが大きなきっかけになって(移設問題も)、いい方向に動くのではないか」

仲里全輝沖縄県副知事
「政府からはまったく聞いていない」
普天間代替施設については、県も名護市も日米合意を踏まえるという立場であり、北部振興策の凍結解除は当然」
「(普天間移設問題と)バーターにしようというのであれば話は別。凍結解除されようが、知事はこれまでの(沖合移動の)主張は譲らないと思う」

荻堂盛秀・名護市商工会長
「北部振興策は地域間の格差をなくすためのものだ。政府は当然(予算執行を)行うべきだ。基地移設にも名護市は協力しており、不安定な対応はやめてほしい。世界で信用をなくす」

平良夏芽・平和市民連絡会共同代表
「県経済の窮状につけ込んで札束で張り倒すやり方だ。金で反対の声を上げにくくする卑劣な行為。人としてやるべきことでない」

安次富浩・ヘリ基地反対協議会代表委員
「沖縄の依存体質が問題だ。基地関連の振興策にどっぷりつかっているから政府にそこにつけ込まれる。この10年で何が変わったろうか。自分たちで首を絞めているんだ」

沖縄県幹部
「代替施設の移設が進展しないということで執行が留保されていたが、北部振興策は県の均衡ある発展のために確保されていたものと認識しており、その意味では正常化したということだ」

まっ、みなさんそれぞれでありいろいろである。あまり人様のコメントにコメントする立場でもないのでここは素通りします。

「現在」を直視せよ!

私が気になったのは、琉球新報さんの社説。
http://ryukyushimpo.jp/news/storytopic-11.html

新報さんは、報道機関として自ら報道してきた事実や、現在の状況についての正確な把握ができていない。以下、少しコメント(赤字)しながら紹介する。

社説:北部振興策 格差是正が原点のはずだが

北部振興策はいつから変質したのであろうか(。戦後長きにわたる苦難の歩みで生じた県外との経済格差や、県内における地域格差の是正が原点のはずだが、「軍事基地の負担増」と引き換えという政府側の切り札にされてしまっている。

●のっけからナイーブな問いが発せられる。昨年の閣議決定で、99年の閣議決定が廃止された。北部振興は廃止された閣議決定を根拠としており、新しい閣議決定ではその年度だけ継続するとわざわざ明記されていた。新聞社がそんなことも知らないはずはない。昨年の閣議決定の時点で、そこに至る名護市長らの「基本合意」の時点で、抑えておくべき問題を、いまごろになってこんなにナイーブに問いとして発する。文学的表現の意なんだろうか:)

これはおかしい。外交努力を怠り、半世紀余も県民に基地の重圧を強いていながら、政府が沖縄に対して高圧的な態度に出るのはどういうことだろう。地元に「アメとムチ」をちらつかせ、予算を凍結するとか、解除するとかいう手法は理解に苦しむ。
問題の本質をすり替えては、事は永遠に解決しない。基地受け入れと経済振興策は基本的にリンク(関連)しないということを、関係各省にはあらためて確認してもらう必要がある 。

名護市長らが額賀防衛庁長官(当時)と基本合意した際に、記者会見に臨んだ当時の宮城茂東村長は、基地建設と振興策のリンクについて「本音と建前を分ける時代は過ぎた」と発言し、明確にリンク論を肯定し基地建設に伴う振興策に期待を表明している。それらの事実と、昨年の「米軍再編」閣議決定で北部振興を位置付けた閣議決定が廃止された事実。琉球新報はそれらを取材する現場におり、事実を報道しているのに、まるでそんな事実がなかったかのように改めて「リンク否定論」を主張している。

米兵による少女乱暴事件から1年が経過した1996年9月。当時の橋本龍太郎首相は「沖縄問題についての首相談話」を閣議決定し、沖縄政策協議会の設置を表明した。談話にはこうある。
「過ぐる大戦で沖縄県民が受けた大きな犠牲と、県勢の実情、今日まで県民が耐えた苦しみと負担の大きさを思うとき、私たちの努力が十分なものであったか謙虚に省みるとともに、沖縄の痛みを国民全体で分かち合うことがいかに大切であるかを痛感している」
さらに「地位協定の見直しや米軍基地の整理・縮小を求める県民投票に込められた県民の願いを厳粛に受け止める」とし、米軍の兵力構成を含む軍事態勢について、継続的に米国と協議していく姿勢を強調した。
首相談話は「反省」と「痛みの解消」を基調としており、アメとムチ論は読み取れない。実際、基地と振興策のリンクを問う記者団に、橋本氏は「(そんな質問は)悲しい」と答えている。首相の姿勢に、県民は沖縄政策の新しい出発点を感じたものだ。
確かに、基地と振興策は切り離せないとの見解はあるだろう。しかし、それは、振興策が基地の整理・縮小につながるという意味でのリンク論)であり、負担増と引き換えということではあるまい。

●そんなリンク論など聞いたこともない。負担が増す自治体に対して、代償として講じる特別の予算措置がある。負担増ではなく負担減少とリンクする特別に予算措置する振興策などあるはずがない。
しかし「北部振興」については、国土総合開発計画の中でも重要性が位置付けられ、沖縄政策協議会でオーソライズされ、閣議決定されていったというプロセスをみる限り、基地建設とのリンクではなく、三次に渡る沖縄振興の中で北部が立ち遅れた(復帰後、沖縄県の人口は100万人から140万人に増加したが北部圏域は12万のまま横ばいしているなど)ことに鑑みて県土の均衡ある発展として位置付けられている。
それが簡単に「米軍再編」のなかで切って捨てられた。いまごろになって、あわてて騒いでもなぁ…と思うが、しかし放置していい話ではない。新報さんには、「リンク論」の否定を「自明の理」にするのではなく、本格的に検証して問題提起してほしい。

こうした原点は、なし崩しにされていく。小泉政権になると、普天間飛行場移設計画の進み具合に応じ、北部振興策を講じる出来高システムが表面化。安倍政権では沖縄担当相が「移設問題は進まないのに、北部振興は国で受けるという形にはならない」と、堂々とリンク論を張る変質ぶりだ。
そこには、県民の思いを「謙虚に省みる」姿勢がみじんも感じられない。北部振興策は、県内の均衡ある発展のために講じられるものである。予算の凍結解除は当然だ。明確な理由もなく当初方針を変えないでもらいたい)。

●06閣議決定で99閣議決定が廃止されたときに言うべき問題であった。当初方針が変わっていくプロセスに沖縄側の自治体首長の判断がどのように関与しているのか、検証して警鐘を鳴らすべき問題であった。その時期を逸して、いまごろになって政府だけを悪者にすればすむ話ではない。

新報さんの社説は、沖縄の私たちの「現在」をみるまなざしを曇らせる。
政府批判だけでは「現在」を乗り越えることはできない。
沖縄の自治体首長、政治家、支配層をまともに批判する必要がある。

【参考】

基地と振興策(上)(なごなぐ雑記06.7.16)

基地と振興策(下)(なごなぐ雑記06.7.17)

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「人魚の棲む海」を潰そうとしているのは日米両政府であり、それに加担して破壊面積を拡大するよう要望しているのが名護市沖縄県である。北部振興はリンクとして廃止されリンクとして曖昧復活し、リンクとして凍結され、またまたリンクとして解凍されようとしている。

沖縄側が「経済」を至上価値として振り回されている限り、この問題が好転することはない。
新自由主義グローバリズムは、沖縄で剥き出しになっている。名護市は米海兵隊の軍港付航空基地建設を受け入れ、同時に金融特区を造ろうと躍起になる。米軍基地と金融特区。これほどグローバリズムの象徴的事例はないだろう。
グローバリズムは人の行為のすべてを経済活動に置き換え、一握りの勝ち組のために大量の負け組み参加者を必要としている。その価値観、そのライフスタイル、そのシステムで、地球上を覆い尽くそうという全体主義機械である。

沖縄は、そろそろ、目を醒まさなければならない。遅すぎることはない。

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