宮城康博blog

沖縄・自治・徒然…Ten Thousand Light-Years from Home

防衛省と沖縄側首長の共犯関係(追記)

今朝の沖縄タイムス朝刊一面のトップ記事

防衛省、振興予算凍結へ/内閣府の北部1次配分沖縄タイムス=07.0731)

話が少しややこしいので、少しざっと噛み砕いて説明を試みる。

名護市を中心とする沖縄本島北部の「北部振興事業」は、99年の閣議決定に基づき基地建設とはリンクしないとされていた事業(10年で概ね1千億円の予算)だったが、防衛庁長官名護市長によりV字形滑走路が基本合意された昨年の閣議決定で廃止された。

それでもなお、10年の途中で消滅させず継続してほしいという沖縄側の強い要望で、「普天間飛行場の移設に係る協議が円滑に進み状況の下、着実に実行する」という政府の統一見解になった。

「北部振興事業」を所管する内閣府は、移設措置協議会に県や名護市は参加しているのだから条件に合致するとしているが、協議会を共催する防衛省は、県や名護市が計画修正を要求する中でアセス手続きも進まず「円滑に進んでいない」として予算執行を拒否している。

ざっとこんなお話である。
一面トップになるような記事かどうかの評価はしないが、前々から報じられていたようなことが、相変わらずの状況で、いよいよ選挙も終わり、予算執行に向けて調整していかなければならないが、やはり相変わらずであるということのようである。

何度も言及してきたことなので、ここでは詳述しないが、「北部振興事業」を消滅させる閣議決定への道筋を防衛庁(当時)と共につけたのは、名護市長であり、金武町長であり、当時の東村長である。
「本音と建前を使い分ける時代は過ぎた」(宮城茂・東村長)と基地と振興策のリンクを明言し、「北部振興事業」を基地受け入れ見返り事業に換えた。

北部振興事業の予算執行を拒否する防衛省の態度を、単純に沖縄への脅しのように捉えることはできない。沖縄(本島北部の地方公共団体の首長たち)側は、防衛省がそのように考え行動する前提を共に作った共犯である。

こういう状況で、「アメとムチ許せん」と憤られても、私は「なんだかなぁ」としか思えない。

「政治」による、その時々の判断(の誤り)が、現在をつくりだしている。そのことの重さを認識しないで自らの利益だけを最大化するよう振舞っても「いいかげんにしろ」といわれるのが世の常である。(これは、沖縄県からの合意前提条件などに対する回答を怠っている防衛省にもいえることである)

防衛省は「北部振興事業」だけでなく、「SACO交付金」に代わって創設された「再編交付金」に関しても名護市への給付見通しを明らかにしていない。

Kitisyuunyuu 名護市の毎年度の予算は、「北部振興事業」「島田懇談会事業」「SACO交付金」と三つの基地関連経費でバブルのように膨らみ続けている。政府によるそのバルブを開け続ける役割の首長が当選し続けてきた。故岸本市長は、政府に対するタフネス・ネゴシェーターだったが、私がブヒ氏と呼び続ける現在の首長はバルブを閉められてなお、主張を続けれるか、あまり期待はできないだろう。(図は私が市会議員時代に作成した名護市の基地関係収入のグラフ)

いずれにしても、現在は市や県が滑走路の沖合い移動を主張しているから、アセスの手続きに入れない状況が続いているのであって、防衛省によるバルブの開け閉めで名護市が降参したら建設への過程は、もう一段先に、ドラスティックに進む。

このような「振興策」や「交付金」に頼らない、自治体にならなければならない。
「振興策」や「交付金」を全否定する必要はない。問題は“このような”である。
この一年以上、事態の推移をみながら、いろいろ考えているが、あまり問題の本質は変わらない。自治体の財政分析と公共政策の検証・検討を丁寧に行い、わかりやすく公開・コミュニケーションしていく必要がある。この“わかりやすく”というのが、一番の難問だ(笑)。

「アメとムチ」による政府の自治体行政への介入&嫌がらせには憤りもするが、しかし、それをはねのける力を持たなければ、「自治」は実現できない。アメをア メとしてしゃぶるのではなく、アメではなく正当な権利として掴みとる。ムチをムチとして甘んじて受けるのではなく、ムチなどふるえないように力強く自らを 律することが求められている。

岩国市もとても大変な状況だろうと思う。岩国がんばれ!
「日米軍事再編」が進行中の今日、米軍基地問題などを沖縄問題として対岸の火事のように考えていると大変なことになる。アベシンゾーが最近言い換えて使っている「新しい国づくり」が、何を考えているのかをしっかり見抜く必要がある。

10年も経て、普天間“代替”ですらなくなった、新基地建設を、沖縄が明確に拒否することで、現在、辺野古で起きている事態も、高江で起きている事態も、消えてなくなる。

沖縄が明確に拒否するか、政府があきらめるか、二つの出口のどちらが先に開くのかはわからない。どちらの出口も開かないかもしれない。それでも開かせる努力をやめるわけにはいかない。

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「北部振興事業」の予算執行、そして「再編交付金」の名護市への給付、この二つの動きは注視する必要がある。

なんかあったら、速やかに覚書を記すことにします。

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【追記】

さっそく沖縄タイムスの夕刊に地元の反応記事が出たので紹介しておく。

まずは名護市の幹部(部長級の職員か副市長かな?)の反応

「あくまで防衛側の意向で政府の方針ではないはずだ。内閣府は予算執行する方向で 進めている」
「(防衛省の強硬姿勢は)まさに札束でほおをたたくやり方で紳士的じゃない。お互いの信頼性も損なう」

ひとつめは、その通りの情報だろうと思う。内閣府防衛省では役所としての役割がまるで違う。一般的な沖縄振興に関することなら内閣府だろうが、基地建設と完全にバーター化した振興事業に関する案件である。名護市幹部には悪いが、事業の性格上、防衛省の方がこの件に関する政府の方針決定への力が強いと考えるべきだろう。

ふたつめは「まさに札束に尻尾を振り受け入れた側」が吐く科白として、アイロニカルに受け止めるしかない。紳士的とは、お互いの信頼性とは、どのような事柄をさしているのだろう。防衛省からすれば、基本合意後にいろいろ注文をつけてくる名護市側にそのまま返したい言葉だろう。

名護市長の後援会長も務める荻堂盛秀市商工会長は

「勝手なことを言っている。地元への配慮もなく、思い通りにならなければ振興策を打ち切るなんて冗談じゃない。こんなやり方なら移設作業すべてをやめてしまえ」

威勢のいいことで、「正論」である。防衛省は移設作業をやめるべきだ。そしてあなたたちも基地誘致と受け入れを。できはなしくせに、こんな言葉を吐いても自らを虚しくするだけじゃないですか(笑)。こういう人々が沖縄で自公を支えている。

「北部振興」を基地建設とバーターにした、防衛省共犯の北部市町村会長の儀武剛金武町長は

「振興策がなくなるとは思っていない。北部としても今後継続を求めていく」

民間人である商工会長より威勢よさも格段と落ちるが、ここまでの道筋を同意してきた立場としてはあまり強気な発言はできないというところだろう。

基地建設に反対する市民団体側の反応も紹介されている。
ヘリ基地反対協の安次富浩代表委員は

「政府は、(代替施設の)2014年完成を目指し強圧的な姿勢をとろうとしている。参院選の結果でも県民は基地を造らせないという意思を示した。このまま強圧的に進めると、仲井真県政にも影響が出てくる」

平和市民連絡会の当山栄事務局長は

「振興策を振りかざし、合意に持っていこうとする政府のやり方は許されない。県は建設に反対して振興策を返上すべきだ」

というものである。当山氏の言う「振興策を返上すべき」は、その通りであり、その意思決定の道理を説得的に選挙民に示しきれていない政党や政治(選挙)に関わる陣営の問題は大きい。沖縄の有権者の大多数は基地反対ばかりでは干上がるとしか思っていない。

反対する市民側の存在をも背景にして政府と交渉し、基本合意してきた沖縄側の行政。
合意実現のステージへと進めたい政府・防衛省と、まだまだ交渉のステージだと主張する沖縄がある。
滑走路の位置を沖合い移動でいじれば、環境問題をも持ち出して日米合意した現計画に矛盾が生じる。滑走路の位置で合意できなければ環境アセスの手続きにすら入れない。強圧的に進めなければ、進めきれなくなった政府・防衛省のジレンマは深い。

沖縄側の関係首長たちの主張もまともじゃないし、政府・防衛省の主張もまともじゃない。
沖縄をアメリカに差し出す共犯者たちの痴話喧嘩はいつまで続き、どのような決着をみるのか。このような痴話喧嘩をやめさせることができない、言葉はあまりにも無力だ。政治はあまりにも矮小だ。

出発点に立ち返る必要がある。
ほんとうにこれは普天間“代替”なのか。