宮城康博blog

沖縄・自治・徒然…Ten Thousand Light-Years from Home

アベ政権は沖縄県民ではなく日本軍を守る

教科書検定」について、民主党川内博史衆院議員のホームページで読んだ二つの委員会質問議事録からわかったことをメモする。

2007年4月24日:決算行政監視委員会第一分科会

答弁者は、 文部科学省大臣官房審議官=布村幸彦

  1. 昨年(2006年)の検定時には、高校一年生の日本史教科書検定では、「集団自決」に関する記述に検定意見はつかなかった。
  2. 今年度の教科用図書検定調査審議会において、この点をめぐる最近の議論を踏まえて、検定意見を付すことが適切であると判断された。

当然、昨年と今年で客観的学問的成果で違いがあったのか質問がされる。

  1. (渡嘉敷・座間味島での集団自決の軍隊長の命令ありという)通説については、近年、当時の関係者などから命令を否定する証言などが出されてきている。
  2. また、沖縄戦の研究者の近年の著作等におきましては、軍の命令の有無というものは明確ではないとされている文献もある。
  3. さらに、平成十七年八月に、従来の通説におきまして集団自決命令を出したとされていた元隊長の方から訴訟が提起されているという状況がある。

1や2は昨年と今年の違いではない、新しい動向は3の訴訟だけであり、それは客観的学問的成果ではない。

修正意見を付すということを審議会第二部会の委員が言ったのか、それとも、この部会の事務局として参加している教科書調査官が発議したのか?

  1. 審議会におきまして、審議会の各委員による調査の結果、それから、各教科、科目ごとの専門委員というものも審議会におります。それと、教科書調査官による調査結果に基づいて教科書調査官が検定意見として取りまとめ原案として審議するという流れになっている。
  2. 行政的な判断を差し挟む余地のない、教育的、学術的な、専門的な観点からの調査により検定意見を付している。  

布村審議官は質問に答えていない。しかし、審議会委員の調査結果だけでなく、文科省職員である教科書調査官の調査結果も含めて調査官が検定意見として取りまとめているということは明らかである。役人が口出しできないというのはイブキ大臣の真っ赤なウソである。

その日は、下村博文(しもむらはくぶん)内閣官房副長官にも質問は飛んだ。
下村官房副長官は、昨年八月二十九日に「立ち上がれ!日本」ネットワーク主催のシンポジウム「新政権に何を期待するか?」に出席し、「自虐史観に基 づいた歴史教科書も官邸のチェックで改めさせる。」と発言している。以下、下村答弁。

  1. その発言は、政治家下村博文として発言。きょうは官房副長官としてであるが、当然であるが、この検定結果に介入してない。
  2. 官房副長官になる前の政治家下村博文としての発言。今は官房副長官として発言するが、介入するつもりは今後もない。

政治家として「官邸主導で歴史教科書を改めさせる」と豪語した人物を、官邸の官房副長官に起用するアベシンゾー政権の目指すリーダーシップがよくわかる。

この日のやりとりでは他に下記の事柄が明らかになった。

  1. イブキ文科相が、文科相職員に「教科書検定についての情報管理を厳重にせよ、官邸に対しても同様である」という指示を出している。
  2. 「集団自決」の犠牲者は、戦傷病者戦没者遺族等援護法による戦闘参加者として、昭和三十三年から弔慰金が支給され(軍の関与が認められ)ている。

2007年4月25日:教育再生に関する特別委員会

教科書検定審議会に出した調査意見書を国会に提出するかしないかでもめる。
驚いたことに、文科省は初等中等教育局長の決裁を受ける行政文書である調査意見書を、審議会が非公開で行なわれている性質上、提出できるかどうか検討を要するという。
これでは、文科省が審議会に出す調査意見書と、審議会の検定意見を比較検証もできず、文科相や役人がいう、違う意見になる場合も多々あるというのは、本当のことかどうかわからない。

文科省における日本史を専門とする教科書調査官は四人。
「日本史の中の近現代史の御専門家は何人か」という質問に役人は答えきれず、イブキ文科相が答弁に立った。

川内先生ね、先生のねらっておられる質問の意図はわかります。しかし、例えば、私は率直に言って文部科学行政は素人なんですよ。だけれども、党内で社会保障のことをやったり税制のことをやっているから。といって、私は税制の専門家かと言われれば、私はやはり専門家じゃありません。学者とは違うわけですから、役人や政治家というのは。

もちろん、私は、社会保障の分野をやったり税制をやったりしていても、自民党の政治家としてゼネラリストなんですよ。それと同じように、教科書調査官というのはどの分野をやっていようと役人なんですから、みんなで知恵を出し合っていろいろなことをやっていくということであって、どこの分野を勉強していたとか、あるいは学校の先生のように、特定のイズムを持って歴史を語るというような立場にある人じゃないということを理解してやってください。

「質問の意図はわかる」と答えるイブキ大臣は確信犯である。役人なんだからと当該調査官について弁明擁護する。一人しかいない日本史の近現代史専門家である当該の教科書調査官について文科省は答えないので、川内議員が名前を出して質問することで明らかになった。

○川内委員 では、新しい歴史教科書を執筆、監修した伊藤隆さんと教科書調査官である村瀬信一さんは師弟関係ですか。

これらについても、政府は一切答えない。
さらに、この日明らかになった検定意見についての文科省の判断は次の通りである。答弁者は文科省初等中等教育局長・銭谷眞美。

今回、教科用図書検定調査審議会で専門的な調査審議の結果出されました検定意見というのは、このような通説を前提とした場合、申請図書の記述が、日本軍の隊長が集団自決を命じたものと理解されると考えられる、そういう記述でございましたので、審議会におきましては、教科書の記述としては、そういう隊長命令があったかなかったかについて断定していると誤解されることを避ける記述とするとの判断がなされたというふうに理解をしております。

ですから、仮にでございますけれども、隊長の命令がなかったという記述が書かれて申請をされた場合にも、これは事務方の推測で恐縮でございますが、検定意見が付されることになるのかなというふうに思っております。

あくまでも公正中立を主張する役人側だが、隊長の命令云々について検定意見は言っていない。検定意見が言っているのは、軍命の有無を争う訴訟がなされているという状況の変化だけを理由に、「集団自決」の記述に対して「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現である」としただけである。

これで二つの議事録から離れるが、以下は全くの私見。(表は共産党さんの赤旗ホームページhttp://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-04-01/2007040114_01_0.htmlから拝借)

2007040114_01_0_3 「日本軍によって」なら隊長命令の有無に関わるが、「日本軍に」なら関わらないのか。

集団自決を「強いられた」は誤解を招き、「おいこまれた」ならいい。

「日本軍に…強いられた」は誤解を招き、誰かわからないものに「追い詰められて」ならいい。

「殺しあいをさせ」は誤解を招き、「殺しあいがおこった」のはいい。

「日本軍により」なら誤解を招き、追いやった主体が記述されなければいい。

「日本軍に…強制された」は誤解を招き、誰かわからないものに勝手に「追い込まれた」ならいい。

これが今回の検定意見「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現である」による修正結果である。「集団自決」から(隊長命令云々ではなく)日本軍の直接的関与が消された。…念のために書いておくが、手榴弾を渡したり集団自決に日本軍は直接的関与をしている。それが現在も存在する生き残った住民たちの証言である。

「集団自決」はそれを問題とするイデオロギー論者が強調する隊長命令云々だけでなく、「教育」によってもたらされたという側面も大きい。今回の検定結果を受けて、その時代背景や庶民が置かれていた状況も重要視する必要がある。現在のような時代だからこそである。アベシンゾーが声高に叫び、自公政権が目指す「教育再生」が、何を目指しているのかを我々は直視しなければならない。

教科書調査官である村瀬信一は、新しい歴史教科書を執筆、監修した伊藤隆さんの弟子のようだが、「つくる会」は内紛に次ぐ内紛で、扶桑社版はもう事実上絶版である。

扶桑社は、「つくる会」から分裂した「日本教育再生機構」と歴史教科書をつくることにしているようである。伊藤隆日本教育再生機構の教科書づくりに参画するとみられている。村瀬信一氏がいつまで教科書調査官でおられるのかはわからない。

日本教育再生機構の代表を務める八木秀次(やぎひでつぐ)は、「つくる会」の元会員で第3代会長、高崎経済大学地域政策学部教授。日本会議の一員でもあるらしい。

噂の真相」2001年6月号に「『つくる会』の皇国史観が結実した『トンデモ教科書』検定合格の裏事情」と題する記事があり、村瀬信一(当時も担当の教科書調査官)のことがしっかりと書かれていたらしい。昨日今日始まったことではない。2005年に「つくる会」が“沖縄プロジェクト”を運動として掲げたときに、今日の状況は十分に予見できたのだろう。あぁ、愕然としてしまう。このままでは、行くところまで行く。「集団自決」は尊い自発的犠牲とされる。

危機感を持って、沖縄の地で生きて活動しよう。

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長々と書いてしまった。

調べれば調べるほど、どこに向かっているのか暗澹たる気持ちになる。
今日も、国会では強行採決だ。「選挙前の国会は荒れる」などという自民党議員の言い分を鵜呑みにしているとタイヘンなことになる。保守だろうとナショナリストだろうと、共産主義者だろうとアナーキストだろうと、とにかく力をあわせファシズムは阻止しないといけない。