宮城康博blog

沖縄・自治・徒然…Ten Thousand Light-Years from Home

回避・低減・代償の先へ

本日、偶然、名護市東海岸の瀬嵩という集落でWWFジャパンのH氏にあった。H氏とは長い間、海上基地建設問題について折に触れ意見交換し、ジュゴン保護活動で共に駆け回り、数年前にはIUCN大会に参加するためバンコクまで一緒に行った。今日は短い時間だったが、これからの環境アセスのことなどについて話せた。ブヒ氏がブヒ字案合意というアホぶりを発揮してくれたおかげで、以来私は、きちんと考えるのもいやになっていた、が、久しぶりに環境の視点から考えてみた。H氏に感謝。

これからの問題を考えるのに、これまでを振り返ってみる必要がある。そのために思いつくままに問題点をスケッチしてみる。

以下はまったくの私見である。

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環境アセスの手続きで行わなければならない環境調査を、ただただ事業の進捗の滞りをおそれて、防衛省は無謀な事前調査として突っ込んだ。私には、自衛隊派兵などという大それたことが、ただただその目的のためだったとは思えないが、とにかく自衛隊まで動かして突っ込んできたのが現実である。

この調査はこのまま突っ走るつもりだろうが、しかし、早晩、環境アセスの手続きには入らなければならない。

施設局はすでに「方法書」を持っている。おそらく、前回の軍民共用空港と大差ないズサンなものだろう。

あの時、問題になったのは何だったか、急ぎ記録を整理しなければならないが、私の記憶では

  1. 使用される航空機の機種等が明らかでない(オスプレイの配備をどのように考えるか)
  2. 飛行時間帯および経路を厳守できる根拠がなく騒音影響評価が曖昧になる
  3. 施設から排出される廃棄物等が明らかにされていない
  4. ミティゲーションについての考え方が示されていない

そのほかにもいろいろあったが、あまりにもデタラメだったのは、施設局に世界中から届けられた意見書の多さが物語っている。

解決が困難な最大問題は、米軍基地の管理権は排他独占的に米軍が持っているという地位協定(第三条)の問題だ。日米が結んでいる安全保障条約上、日本国政府は建設する事業者だが、完成後の運用管理主体ではない。施設完成後の運用上の環境影響予測・評価は、すべてあやふやで空論でしかない。米軍基地建設に環境アセスは可能なのか、という根本問題が我々の前には壁となってある。

それ以外にも、立地場所の自然度の高さは並大抵のミティゲーションでは合意形成が図れるようなエリアではないという、立地選定で生じた困難さがともなう。

象徴的なのが絶滅が危惧されるジュゴンである。ジュゴンは国際的にはフラッグシップ スピーシーズ(種の旗艦)として種の保存の象徴にもなっている。人間の活動エリアである沿岸域の海草藻場を餌場とするジュゴンの生存は、人間の生存可能性にも深く関わる問題として意識されている。

建設予定海域に広がるジュゴンの餌場である海草藻場をどのように保全するのか。

海草藻場については、日本自然保護協会のジャングサウォッチなど、環境保護団体が市民参加でおこなってきた科学的調査のストックがすでにある。
事業を遂行しながら、海草藻場をどのように保全するのか、ミティゲーションできるかの知見はだれにもない。

ミティゲーションには本来なら五つの段階があるらしいが、次の三つに簡略化したとしても事業者はどのように考えているのか、評価を入れるまでもなくわかっていることについては「方法書」で方向性をしっかり示すべきである。

  1. 回避
  2. 低減
  3. 代償

政府が示している図面をみても、すでに相当量の海草藻場が破壊されるのは明らかである。名護市の要求する沖合移動で計画変更したら、破壊が拡大するだけで回避にはつながらない。

1の回避は事業は埋立てであり不可能、2は埋め立て面積を減らすなどして多少はあったとしても、壊滅する部分があるのは避けられない。3の代償しか出口はない。そんなことは防衛省もよく知っている。

しかし、海草藻場の移植は、地球上何処でもことごとく失敗しており、アメリカの官僚で科学者でもアルマーク・フォンセカ博士の報告からもわかるように、埋立てで失われる生態系の代償は不可能だと断じざる得ないのが現実である。

政治的に決定したプロセスを、環境アセスを通じて、どのように科学的合理性に基づいた合意形成に持っていけるのか、困難なプロセスが市民側にも事業者側にも待っている。

野生生物の生息域(ハビタット)を定量的に評価し、事業による損失と代償の比較をする、HEPという手法を取り入れる必要があると思う。それほどには、ジュゴンの生息域である予定海域は貴重な海である。

HEPだけが、事業者にとっても、市民社会にとっても有意義な合意形成への道筋を示すことができるだろう。…こんなことをいうと「建設賛成なのか」とお叱りを受けそうだが、私は人間を信頼したい。損失と代償がワリに合わなければ、ゼロオプションしか出口はない。…政治的な差別構造がこの問題には深く埋め込まれており、ことはそんなに単純ではない、ということを重々承知しつつ、私はそれでもそう語る地点を手放したくない。


いずれにしても、なんでこんな自然度の高い場所に決めたのか。政治も官僚もそんなにアホでは務まらないないだろう。関西の大学で教えている海兵隊関係者のようなアメリカ人(名前忘れた)が言っている、《だれにも利益がない無理な案》と言うのは当たっている。10年もかけてできなかったのは、それなりの理由がある。

北海道でのサミットや温暖化対策(閣僚は全員6月から沖縄のかりゆしウェア着るってさ)なんかで、環境をウリにしたいらしいアベシンゾーが、沖縄で実現しようとしている環境破壊のむごたらしさを、しっかり情報発信していくべきだろうね。

【参考】 

辺野古ジャングサウォッチ(日本自然保護協会)

ジュゴン保護活動WWFジャパン)

HEPについては田中章(武蔵工業大学環境情報学部助教授)