みやぎブログ

演劇・戯れ・政治

薄っぺらなレトリック

19_7しかし、まぁ、アベ政権は悪法を量産し続けている。

教育基本法国民投票法・再編特措法・少年法・更生保護法・教育三法

それらすべてが、自民公明による「強行採決」である。調査結果を確認していないが強行採決すればするほど、政権の人気がアップするらしい。ほんとかよ、と思うが、強行採決は強いリーダーシップに映るらしい。

ビルの屋上や断崖絶壁から落ちながら、人は自分たちがつくりだした現実に気付く。
弱者に厳しい悪政。その結果の自殺者続出は、悪政による殺人である。自民党公明党を支持したマジョリティもその殺人の責を免れない。投票とはそれほど、重要な参加である。

ブログ記事「13日の金曜日 」にも書いたが、4月の“13日の金曜日”は、「国民投票法」「再編特措法」という悪法2案が衆院強行採決された日だった。

以前、気になって再編特措法案審議中継のビデオから起こしていた、公明党・赤松正雄衆院議員の討論があるので、以下に覚書として書き記しておく。

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4月13日金曜日/衆議院本会議

駐留軍等再編の円滑実施特別措置法案の採決に当たって、公明党の赤松正雄が賛成討論に立った。

赤松正雄は討論で、アメリカ海兵隊のグアム移転などにふれ、再編で沖縄に集中する在日米軍基地の75%が70%に縮小されることを、大仰に評価して見せた。

その後に、安全保障委員会参考人質疑で沖縄からの参考人の、「日米同盟を一言で言えば」という質問に対する「日米共同覇権主義の象徴」という回答を、物事の一面を偏って見ていると断じた上で、下記のように演説を続けた。
以下、衆院テレビより反訳(強調=筆者)。

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赤松正雄衆院議員公明党)の再編特措法の賛成討論

(前略)

戦争で失った領土を交渉を通じて返す、といった世界の歴史の中で極めて珍しい「沖縄返還」という決断をしたアメリカと、それを可能にさせた日本との二つの国家の確かなる運命の糸を感じます。

(拍手あり、赤松満足そうに議場に応える)

あの瞬間からかつての恩讐を乗り越えた、日米同盟の絆が芽生えだしたものと確信をするわけであります。

その絆を構成するものは、単に軍事力だけではなくて、文化力の側面も見逃されてはならないと思います。

沖縄を、アメリカ極東軍事戦略のキーストーンとだけ位置付けるのではなくて、それと同時にアジア太平洋の平和戦略の島に変えていかなければならないのではないのでしょうか。

その営みは、すでに随所にみられると思います。
今回の法案が、そういったこれまでの歩みと重なる一歩となるよう念じて、私の賛成の討論といたします。ご清聴ありがとうございました。

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衆議院TV
→4月13日→本会議→赤松正雄(公明党)14:42(06分)

私は《文化力》などという言葉を寡聞にして知らない。この言葉に引っかかり、上記の件を反訳してみたのだが、この討論の中には、とても重要な公明党の考え方があらわれている。

  1. アメリカと日本には「沖縄返還」までは恩讐があった。
  2. 沖縄返還」で日米同盟の絆が芽生えた。
  3. その絆には軍事力だけでなく文化力がある。
  4. 沖縄はアメリカ極東軍事戦略のキーストーンとだけ位置付けられている。

1にいう恩讐《恩義と恨み》における恨みは、敗戦の恨みなのか、恩義は敗戦からの復興のことなのか、公明党は先の大日本帝国が起こした戦争を反省などしていないのだろう。

2にいう絆《離れがたい結びつき》とは、沖縄返還で芽生えたらしい。沖縄の帰属問題は、日米のご都合だけでは語れない複雑な問題をはらんでいる。沖 縄が日本国の領土であるということは国際的には明確にいえないという事実に基づいて、米国は復帰前に日本復帰を阻むため沖縄人に対する宣撫を展開した。し かし、最終的には米軍基地の自由使用と莫大な資金供与の日米密約で返還はなされた。日米の《絆》=日米同盟は、根幹に《密約》がある沖縄返還で芽生えたと公明党は国会で堂々と礼賛しているのである。

3の《文化力》という日本語の意味はわからないが、前段で「物事の一面を偏って見ている」と参考人の意見を断じてみせた続きで、日米同盟の別の面と言う意味合いなのだろう。文化力という造語の貧しさが、隠蔽しようとした日米同盟の軍事力の惨さを際立たせる。

4は、ここまで来ると公明党らしい馬脚というしかない。賛成討論している法案の目指す方向とは逆な《アジア太平洋の平和戦略の島=沖縄》という実体のない空疎な理想を言うために、沖縄の現状を《アメリカ極東軍事戦略のキーストーンとだけ位置づけ》と正しく言い表している。

公明党のいう、平和の空疎さ、歴史認識のずさんさ、沖縄認識の浅薄さがよくわかる、薄っぺらなレトリックの討論である。薄っぺらだが、この薄っぺら さで権力の一翼に座を占め悪法量産の強行採決に加わっているのである。政治思想信条に中身のない薄っぺらな権力志向ほど恐ろしいものはない。

沖縄における国政選挙や、重要な首長選挙自公協力の原点らしい。
沖縄で現状を変革する政治を考えるものは、この薄っぺらさを剥ぎ取り、無力にできなければならない。

私の知っている女性学会員は熱心な平和活動家だったが、彼女らは、基地建設のための自衛隊派兵や、沖縄に対する基地強化の動きをどう見ているのだろう。

1999年ごろまでは、基地建設の動向に泣いていたんだけどねぇ。


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