ウリ坊小道
私とゴンの今朝のお散歩は、15年ほど前にウリ坊と出遭った、貯水池のそばの小さな道。
天気は晴れ、気持ちのいい朝日が木々の間から差し込んでくる。
しかし、あたりの草木は、夕べの雨で濡れていた。
短足胴長のゴンは濡れながら、地面や草木の匂いを嗅ぎながらフラフラ歩いている。
ゴンが立ち止まり匂いを嗅いでいる貯水池のフェンスの下に、貯水池へ向かうように穴が掘られている。ちょうど、15年前にウリ坊と出遭った場所の近くだ。おそらく、イノシシが貯水池に行くための通り道なんだと思う。
あのときのウリ坊はどうしているだろう。イノシシの寿命はわからないが、どれほど成長しているだろうか。もしかしたら、もう天寿を全うしたのだろうか。
なんか成長したウリ坊と出遭えそうで、しばらく私はその場でたたずんでいたかった。
ゴンは不思議そうなまなざしで振り返り、離れたところでじっとしていた。
しばらくして、私たちは何事もなかったように歩き出し、人々が暮らす町の方へと向かう。
青い葉の上で溜まっていた水が、光ながら地面へと落ちていった。
私は“ウリ坊小道”があるこの田舎町が好きだった。